事業を始めるにはお金がかかります。
したがって、開業のための資金を調達する必要があります。
開業資金の調達に使うのが「創業融資制度」です。
今回は創業融資制度とはどのようなものかまとめました。
この記事では以下の内容に触れています。
・創業融資制度とは開業前後のための融資制度
・日本政策金融公庫と信用保証協会の説明
・公庫と保証協会の違い
・創業融資は通常の融資と違う
・創業融資は受けるべきか?
創業融資制度とは開業前後のための融資制度
開業資金を調達するときに使うのが創業融資制度です。
では、そもそも創業融資とは何なのでしょうか?
創業融資とは、
これから事業を始める人や事業を始めて間もない人に対して、
金融機関が事業資金の融資をするものです。
特に創業期の融資は公的な融資制度を使うことがほとんどです。
公的な融資制度としては主にこの2種類になります。
1.日本政策金融公庫の創業融資制度
2.信用保証協会の保証が付いた融資
このどちらか、もしくは両方使って融資を受けます。
融資の金額としては数百万円で収まることが多いです。
また、創業融資というと開業前や開業と同時に融資を受けるイメージがありますが、
開業した後でも融資を受けることができます。
日本政策金融公庫と信用保証協会の説明
日本政策金融公庫とは?
日本政策金融公庫とは政府が100%出資している株式会社で、事業資金の融資や教育ローンを扱っています。
政府系の金融機関なので、そのときの政策方針によって融資姿勢が変化したりします。
ここ数年は、政府が創業やソーシャルビジネス、事業承継を課題に挙げているため、
この分野の融資が積極的に行われています。
そのほかに、大規模な災害や深刻な経済危機が発生した時には緊急措置的に融資制度が創設されます。
例えば、リーマンショックや東日本大震災、新型コロナウィルスの対応で特例措置が発動されました。
創業や災害時の融資など民間金融機関が対応しきれない部分を補っている側面があります。
創業融資の実績が豊富
日本政策金融公庫は日本で一番創業融資の実績がある金融機関です。
コロナ以前は毎年2万6千~2万8千社の創業者へ融資をしていました。
また、創業者向けにさまざまな創業融資制度が用意されています。
たとえば、
・新創業融資制度
・新規開業資金
・女性・若者・シニア起業家支援資金
・中小企業経営力強化資金
など、申込者の状況によって制度が適用されます。
信用保証協会とは?
各都道府県に信用保証協会という組織があります。
千葉県なら千葉県信用保証協会です。
こちらも日本政策金融公庫と同じ公的な機関です。
そのため、公庫と同じように災害や経済危機にはセーフティーネット制度が発動します。
保証協会は融資をしない
信用保証協会自体はお金を貸しません。
お金を出すのは金融機関で保証協会は保証のみをします。
信用保証協会は融資を受けようとする際に、申込者の連帯保証人になるようなイメージです。
(正確には少し違います)
信用保証協会の審査に通り、保証を得ることができれば、銀行から融資を受けることができます。
たとえば以下のような流れになります。
・銀行に融資の申込みを行う
⇓
・銀行が事前に審査をし、保証協会に案件を持ち込む
⇓
・保証協会が審査をする
⇓
・保証協会の審査に受かる
⇓
・銀行が保証の限度内で融資をする
という感じです。
なぜ銀行が保証協会の保証を条件とするか?
なぜ保証協会が必要なのでしょうか。
簡単に言うと、銀行が回収不能リスクをなくせるからです。
万が一融資したお金が回収不能となった場合、回収できなかった分を保証協会が銀行に補填します。
なので、銀行としてはリスクなく融資ができるのです。
貸す側のリスクをなくすために保証協会の保証が必要なのです。
わかりやすく単純化した例をあげると、
A銀行がX社に300万円を融資していますが、X社が倒産したため300万円が回収不能になりました。
この300万円を保証協会がA銀行に補填します。
A銀行は300万円が保証協会から入ってきたので回収不能分をまかなったことになります。
銀行に300万円の痛手はありません。
ただし、このあとX社の代表者には保証協会から取り立てがあります。
保証協会は複雑な制度
保証協会は自治体と連携した融資制度も用意しています。
自治体によって、市町村と保証協会と金融機関の3者が連携して融資制度を設けています。
市町村とは別に、都道府県と保証協会と金融機関が連携した融資制度もあります。
これらを「制度融資」といいます。
市町村の制度融資は地域差があり、A市には融資制度があるが隣のB市には融資制度はなく利子の補給のみ。ということもあります。
市町村ごとに融資を受けるための条件が違うことも多いので、各市町村のホームページを調べる必要があります。
信用保証協会の創業融資も増えてきた
これは日本政策金融公庫の職員さんから聞いた話ですが、公庫の創業融資件数が少しずつ減ってきたそうです。
理由は公庫が貸さなくなったのではなく、民間金融機関が信用保証付きの創業融資に力を入れてきたことが要因になっているとのことでした。
今までは創業融資といえば日本政策金融公庫でしたが、今後は信用保証協会の創業融資を検討する人も増えるかもしれません。
公庫と保証協会の違い
日本政策金融公庫と信用保証協会の保証付き融資はどちらも開業資金の融資をおこないますが、違いもあります。
主な違いは以下のようなものです。
信用保証料の有無
保証協会を使うと、信用保証料というものが徴収されますが公庫では信用保証料はありません。
入金までの期間
ケースにもよりますが、融資までのスピードにも差があります。
一般的に公庫は申し込みから入金まで約1ヶ月程度。保証協会は約2ヶ月程度が多いと感じます。
さらに市区町村の制度融資を利用する場合は自治体の斡旋書が必要なので、さらに時間がかかります。
利子補給がある
市区町村の制度融資を申し込むと、多くの自治体で利息分を負担してくれたり、後で給付してくれます。
最近では公庫の創業融資でも、市町村の創業スクールを修了した方は利子補給が受けられるところもでてきました。
保証協会を利用してプロパー融資をめざす
保証協会で創業融資を受けると民間金融機関と融資取引が始まることになります。
銀行と上手に関係を構築していければ将来的にはプロパー(保証協会なし)で融資取引ができるようになり、
プロパー融資ができると将来の資金調達の選択肢を増やすことができるのです。
創業時に保証協会を使うのはそのためのよい入口といえます。
日本政策金融公庫のみから借りていると将来的に限度が来てしまいます。
(金融機関がひとつの企業に融資できる金額にも限界がある)
そのため、公庫と銀行を両方使うなど、1つだけでなく2か所以上と融資取引をしておくと、数年後の資金調達先を増やすことができます。
創業融資は通常の融資と違う
創業融資は、通常の事業融資と違うところがあります。
大きな違いとしては審査の基準です。
事業を何年も続けてきた会社の融資は決算書の内容を重視して審査がされます。
決算の内容次第で融資ができるか決まってしまうということです。
(決算書で7~8割決まってしまう)
対して、これから創業する会社や個人事業には決算書が存在しません。
ということは、決算書で審査をするという従来の方法が使えないことになります。
では、何を見て融資の審査をするのかといえば主に以下の3点です。
1、自己資金
2、開業する業種の経験
3、事業計画書
この3点を公庫も信用保証協会も重視しています。
これが通常の事業資金の融資との大きな違いです。
創業融資と通常期の融資はまったくの別物と考えていただいた方が良いかもしれません。
創業融資は受けるべきか?
そんな創業融資ですが、はたして受けるべきなのか。
それとも自己資金だけで開業するのか。
いろいろな意見がありますが、個人的には創業融資は受けておいた方が良いと考えています。
よくある難しいご相談
たとえば、こんなご相談を受けることがよくあります。
「自己資金だけで開業して半年たったが資金がなくなりそうなので融資を受けたい」
このような場合、売上が低迷して赤字が累積してしまっているケースが多いです。
入ってくるお金より出ていくお金の方が多いわけですね。
開業1年未満で赤字が続いている会社への融資は、これから開業する方と比べると、とても難しいです。
開業してからの実績によっては融資が受けられないこともあります。
この段階で融資が受けられなければ、その後かなり厳しいことになるのは容易に想像できてしまいます。
このような状態に陥るのであれば、
開業前や開業直後のまだ営業実績が出ていない段階で創業融資を申し込んだ方が融資の可能性も金額も上がります。
創業融資のお金で資金的な余裕を持っていれば、
たとえ開業後に赤字になったとしても、資金的余裕があるうちに試行錯誤を繰り返し、顧客を増やして徐々に黒字化する。
という時間的な余裕もできます。
上記とは別の例も十分あります。
運転資金を創業融資で受けて開業したが、順調に集客でき早々に黒字化できた、というケースです。
であれば、淡々と返済していってもよいですし、資金に余裕があればその資金で雇用するなど次の手を打つことも考えられます。
余裕や選択肢を増やすために創業融資を受けて「運転資金を潤沢に確保」しておく、というのも創業期の大事な点のひとつだと思います。
さいごに
創業融資は創業期にだけ使えるものです。
基本的には日本政策金融公庫か信用保証付きの融資を使うことになります。
創業期はこのどちらかを使い、業績の向上と同時に金融機関との信用構築を行いましょう。
また公庫だけ使うのではなく、民間金融機関からのプロパー融資(保証協会不要)を目指していくことが事業発展の大きな力になります。
資金調達に関しても行き当たりばったりでなく「戦略的」に検討することが大切です。