柏市 公庫の起業資金の融資 審査基準を解説

柏市 公庫の起業資金の融資 審査基準を解説

開業時の融資にも審査があります。
今回は創業融資の審査基準をお伝えいたします。

ご参考になれば幸いです。

自己資金

自己資金といっても金額のみで審査しているのではありません。
金額はもちろんですが、他にも審査しているポイントがあります。
順に解説していきます。

自己資金の金額
自己資金は総事業資金の3分の1以上が理想的

総事業資金の3分の1以上の金額がご自身の銀行口座にあると理想的です。

総事業資金とは、開業時にかかる設備資金と運転資金の総額を合計した金額です。
たとえば、
設備資金 500万円
運転資金 400万円
だとすると、合計900万円が総事業資金となります。

この900万円の3分の1である300万円を自己資金で持っていて、残りの600万円を融資で調達する。

このように3分の1を自己資金で。残りの3分の2を融資でまかなう。
ということができると理想的です。

ただ、必ずしも3分の1の自己資金を持っていなければならないかといえば、そうではありません。
4分の1や5分の1でも融資はされます。
少なめの自己資金で融資を申し込む際は、後述する他の要素でプラス評価を得る必要があります。

自己資金がゼロでも融資は申し込めます。ですが、その状態で申し込んでも厳しいでしょう。
「土俵にあがる」のと「実際に勝負になるか」は別ものということです。

自己資金は多いほど有利になる

自己資金は「総事業資金の3分の1が理想」と書きましたが、それ以上に持っていれば、さらに有利になります。

たとえば、総事業資金の2分の1あれば融資の確率はさらに上がります。
前掲の例でいえば、900万円の2分の1の450万ですね。

自己資金が多いと大きい金額の融資も可能

自己資金の金額が大きければ、融資を受けられる金額も大きくなります。

たとえば、自己資金が100万円で800万円の融資を受けようとすると、ハードルは高いです。
ですが、自己資金が500万円あれば1000万円の融資も可能になります。

このように、自己資金があればあるほど、融資の確率、融資金額ともにプラスの効果があります。
逆にいえば、自己資金が少ないと、確率、融資金額の両方とも厳しくなるということです。

自己資金=資本金ではない

株式会社や合同会社を設立して開業する方もいらっしゃると思います。
この時のよくある勘違いとして、法人設立時の資本金を自己資金と考えてしまう事です。

創業融資の際の自己資金は資本金の金額ではありません。
自己資金というのは、あくまでも通帳にある事業用に使用する予定の金額です。

たとえば、資本金50万円(資本金は使っていないものと仮定します)と、資本金の他に事業用に使う予定の手持ち資金が150万円の合計200万円あったとします。
この場合、資本金の50万円+資本金以外の現金150万円の合計200万円が自己資金となります。

自己資金の蓄積過程

自己資金は金額のみで審査をしていません。
自己資金の蓄積過程も審査の対象となっています。

給料をコツコツ貯める

たとえば、審査時の通帳残高が毎月の給料を貯めたものであれば理想的です。
なぜかというと、少しづつ貯蓄してきたということは、開業に向けて計画的に準備してきた。と評価できるからです。
とくに、日本政策金融公庫はこの「準備」を評価する傾向があります。
少しづつ貯めてきたことが分かれば、自己資金が少なめでも、希望通りの金額を融資することがあります。

支援金のみは評価が下がる

前掲のように、自分で貯めた金額ではなく、「通帳にある現金は全額、親族からの支援金です」という場合、自分で貯めた自己資金よりも低い評価になります。
なぜなら、自己資金の重要な意味である「開業に向けた準備」として評価できないからです。

自分で貯めたお金がそれなりにあって、少し不足するので支援金をもらうというケース、であれば問題ありません。
たとえば、自分で貯めたお金200万円。父親から50万円もらう。
合計250万円を自己資金とするようなケースです。
これなら自分で努力しつつ、家族からの協力もあると見ることができるでしょう。

見せ金はNG

自己資金を増やそうとして一時的にどこかから借りてくることも考えられます。
ですが、基本的にこのような「見せ金」はバレます

ひとつウソがばれると他のところまで疑われますのでやめましょう。

支払い状況
支払いに遅れはないか

お金の蓄積だけでなく、支払い状況も審査基準となっています。
支払い状況とは何かというと、「支払うべきものを期日どおりにしっかり支払っているか」です。
たとえば、毎月の電気代やガス代、携帯代、家賃などがこれにあたります。
期日どおりに支払っていれば、なにも問題ありません。

日本政策金融公庫は最低3種類の支払いができているか確認しています。
見落としがちな点ですが、重要な点なので注意しましょう。

税金の納付状況

税金の滞納も要注意です。
納める義務があるのに納めていない場合、基本的に融資はできません。

これも「支払うべきものを支払っているのか」ということです。

また、融資には納税の証明書を提出する必要があります。
この証明ができなければ、そもそも審査に入れません。

そのほかに、日本政策金融公庫や信用保証協会は税金をはじめとした公的資金で運営されています。
これも納税が条件になっている理由のひとつです。

ただ、合法的に免税になっていて納める必要がない場合は利用できることがあります。

開業業種の経験

創業融資では「開業業種の経験」も審査の対象となります。
どのような点が審査で重要なのか見ていきます。

開業する業種の経験があると有利

開業する業種での勤務経験があると審査にプラスとなります。
勤務経験がない人よりも、ある人の方が業務の内容を知っているため、事業がうまくいきやすい、と評価されます。

金融機関としても事業が成功する可能性の高い人に貸したいです。

また、日本政策金融公庫の融資先を調査した資料によると、勤務経験がない人はある人よりも返済できなくなる確率が高い。という調査結果がでました。

この調査結果からも、経験があって、返済の可能性がある方が有利になるとわかります。

自己資金不足を補う効果がある

勤務経験があると、自己資金が多少不足していても、自己資金の弱さを補う効果があります。
経験や実績は十分にあるが、自己資金が若干少ない。といった時に、「自己資金は少し足りないけど、経験がこれだけあれば融資しても大丈夫だろう」という判断になることがあります。

ただ、あまりにも自己資金が不足する場合は経験で補いきれません。
自己資金と勤務経験、双方のバランスが評価の対象となります。

勤務年数より実績

開業業種の経験で大事なのは年数よりも、勤務時代の実績です。
勤めた期間よりも、「勤務期間に何を経験した」のか
これが審査のポイントです。

例えば営業職だった人なら
20××年  年間で○○○○円の契約実績。○○件の新規顧客を開拓。
という感じです。

会社でなにか賞をもらったことがあれば
20××年  社内で売上げトップになり社長賞を受賞。
などです。

このように、何を経験したのか、自分の強みは何なのかをアピールしましょう。
自身の経験は事業計画書に記載して、担当者が読めるようにしていくと良いです。

勤務経験がなくても融資はする

開業業種の経験があると、融資に有利と書いてきました。
しかし、勤務経験がないからといって必ずしも融資しないわけではありません。
経験がなくても融資はします。

ただし、大きな金額は出にくくなるなど、不利な部分はどうしても出てきてしまいます。
経験がないことに加えて、自己資金も少ないとなると、融資はかなり厳しくなります。

経験不足は他で補う

勤務経験がない場合は、経験以外の要素でカバーする必要があります。
例を2つほど挙げてみます。

自己資金でカバー

経験がなければ、自己資金を多く持つことによって経験不足を補います。
自己資金と経験のバランスです。

両方あれば良いのですが、なかなかそういかないことも多いです。
開業業種の経験が少なければ、自己資金を多く。
自己資金が少なければ、自己資金不足を補う経験。が必要です。

フランチャイズに加盟する

自分が開業する業種のフランチャイズに加盟するのも、ひとつの解決策です。
フランチャイズのノウハウを利用することで、自分の経験不足をカバーします。

フランチャイズは既に完成されたビジネスモデルを利用することがメリットとしてある反面、デメリットもあります。
フランチャイズ本部にもよりますが、自由が制限されることが多いです。

また、加盟金や研修費などが高額になることもよくあります。
このようなメリット、デメリットを考慮して決めましょう。

事業計画書

事業計画書の内容も審査に影響します。

事業計画書は分かりやすく

事業計画書は自分の事業の強みなどが、わかりやすく記載されていると良いです。
内容が分かりにくい事業計画書を作成しても、審査する側に伝わりません。

だからといって、数十ページもある計画書を作ったとしても、すべて読むことができません。
なので、ポイントをしぼって10ページ位にまとめて、審査しやすくしていきましょう。
そのために、最低限必要なものについて解説していきます。

フォーマットを提出

日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合、公庫に創業融資制度のフォーマットが用意されています。
このフォーマットの各項目を埋めて提出します。
以下フォーマットの項目を挙げてみます。

1.創業の動機
2.経営者の略歴等
3.取り扱い商品、サービスの内容
4.セールスポイント
5.販売ターゲット・販売戦略
6.競合、市場など企業を取り巻く状況
7.取引先、取引関係等
8.従業員
9.お借入れの状況
10.必要な資金と調達方法
11.事業の見通し
12.自由記入欄

以上を埋めて提出します。

フォーマットの記載事項を別紙にまとめる

公庫のフォーマットを埋めて提出すると書きました。
ですが、フォーマットの記入欄だけでは記載しきれません。
例えば、創業の動機などは4行しかありません。
4行で自分の想いを表現するのは不可能に近いです。
なので、フォーマットで表現しきれないところは、別紙に書いて提出します。

どの項目を詳しく別の紙に書いていくのか。
当事務所の例を挙げてみます。

上記「1」創業の動機、
「2」経営者の略歴、
「4」セールスポイント、
「5」販売ターゲット・販売戦略、
「6」競合、市場など企業を取り巻く状況、
「7」取引先、取引関係。

以上をWordで詳しく書き「創業計画書 補足資料」という題名で提出します。

この補足資料で書いた内容を要約したものを、フォーマットに記載します。

「11」の事業の見通しは、Excelで「損益計画書」を3年分(36ヵ月)作成します。
その表から開業当初の損益と軌道に乗った頃の損益をフォーマットに記載します。
Excelで作成した「損益計画書」ももちろん提出します。

資金繰り表も作成

資金繰り表も作成できるのであれば、作成したい資料です。

資金繰り表とは簡単に言うと「現金の出入りのみ」を計算する表です。
なので、減価償却費など実際に現金が出ていってないものはカウントしません。
「いつ現金が入ってきて、いつ出ていくのか」
これだけを表します。
これも12ヵ月分の表を作って提出したいです。

とくにこの資金繰り表があると、会社の資金の流れがわかりやすくなります。
返済ができることを示せる書類となり審査にプラスですので、ぜひ作りましょう。

個人的借入れ

個人的借入れも審査に影響があります。
こちらについても解説していきます。

個人的債務が多額にあると不利

カードローンや消費者金融などの残債が多額に残っていると、審査では不利になります。
金額しだいでは、これが原因で否決になることもあります。

仮に融資したとしても、既存の返済に、創業融資の返済も加わると、資金繰りが厳しいのではないか。
という判断になります。

ある日本政策金融公庫の職員は「カードローンを借りる前に、公庫で借りてほしい」と言っていました。
たしかに、その方がカードローンよりも大きい金額が低金利で借りることができます。

先にカードローンなどを利用すると、ある程度返済が進むまで公庫などで融資が受けられません。

なので、金利が高いところからの借入れはできるだけ控えましょう。

個人信用情報機関をチェック

日本政策金融公庫で融資を受ける場合、ほぼ確実に個人信用情報をチェックします。
なので、その人に借入れがあるのか、返済は滞っているかどうかなど分かってしまいます。

仮に既存借入れの返済に延滞や滞納が発生していると、評価はマイナスです。
何度も延滞していると、これが原因で否決されることもあります。

ちなみに日本政策金融公庫が利用している個人信用情報機関は「CIC」という機関です。
ネットでCICにアクセスすると、自分自身の個人信用情報をとることができます。
気になる方は一度、見てみるとよいかもしれません。

住宅や車のローンなどは影響が少ない

個人的な借入れといっても、すべての借入れに問題があるわけではありません。
金額にもよるとは思いますが、住宅ローンや車のローン、奨学金などは影響が少ないです。

住宅などは、そもそもローンを組まないと購入できません。
また、金利も低く抑えられています。
このような性質の借入れはあまり問題にはなりません。

その他

前掲した内容以外に融資にプラスに作用したことをいくつか書いていきます。
すべて当事務所のお客様の事例です。

自治体の創業セミナーを受ける

各市町村で「創業セミナー」が行われています。
この創業セミナーを修了すると、融資審査にプラス効果があります。

創業セミナーを修了すると、公庫や制度融資で通常よりも利息の負担を抑えることができます。

利息以外の効果として、そもそも融資が借りやすくなる作用があります。

これは、お客様の創業融資の面談に同席したときのことですが、公庫の担当職員に「創業セミナーを修了してます」と伝えました。
すると、その職員さんが「創業セミナー終えてるんですね。プラスになりますよ」という話をされていました。
ということで、公庫では融資の判断そのものに良い影響があるようです。

売上をつくる

創業融資を申し込む時点で売上げがあると良いです。
テスト販売でもかまいません。
実際に売れていると評価は違ってきます。
これも公庫の職員さんの話で「売上げの実績が1件でもある人と、まだ0件の人では全然違います」と話していました。

すでに売上げの実績があれば、「今後も販売できるだろう」と予想できます。
であれば、融資しても大丈夫だろうと判断できます。

売上げの事実を証明できる書類を添付資料として提出しましょう。

事業パートナーがいればアピール

一緒に事業を行うパートナーがいれば、プラスになることがあります。
パートナーの人との関係にもよりますが、自分の不得意な部分をカバーしてくれる人がいると心強いです。
経験不足を補う効果が見込めます。

また、困難なことにぶち当たっても1人より克服しやすいでしょう。
パートナーがいるなら、事業計画書に記載して、審査の際に伝わるようにしておきましょう。

まとめ

ここまで、創業融資の審査基準について書いてきました。
まとめてみましょう。

審査でプラスになる要素

・自己資金を多くもつ
・支払うべきものをしっかり払っている
・開業業種の経験が豊富
・事業計画書はポイントをしぼって、わかりやすく
・個人的な借入れを控える

審査でマイナスになる要素

・自己資金が少ない
・支払いを何度も遅れる。又は滞納している。
・開業業種の経験がない
・事業計画書の内容が伝わらない
・個人的な借入れが多額

以上、創業融資の審査基準についてお伝えしてきました。
自己資金、経歴、事業計画書の3点を特に注意すると良いでしょう。

弊所では創業融資のご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。