事業を始めるにはお金が必要です。
数百万必要になることも普通です。
そのため、銀行などから融資を受けることがあります。
融資なので元金の返済以外に「利息」を払います。
できれば利息の負担は抑えたいですね。
今回は利息を少し抑えた創業融資制度を解説していきます。
少しでも役に立つ内容であれば幸いです。
なお、この記事では以下の内容を扱っています。
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- 使う人が多い「新創業融資制度」
- 起業する人の年齢や性別で利息を抑える融資制度
- 条件に合うと利息が抑えられる融資制度
- ソーシャルビジネスで利息が安くなる融資制度
- 支払った利息を自治体が補助する制度
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目次
使う人が多い「新創業融資制度」
金利が低い創業融資制度を見る前に、よく利用される創業融資制度をご紹介します。
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」です。
まずはこちらの紹介から。
新創業融資制度の概要
利用できる方
新たに事業を始める方、事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象。
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金)を確認できることが条件となっています。
資金の使い道
新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額
3,000万円(うち運転資金1,500万円)
返済期間
各種融資制度で定めるご返済期間以内
利率(年利)
基準金利 2.41~2.80% (令和2年11月2日現在)
担保・保証人
原則不要
解説
新創業融資制度は自己資金要件を満たしていれば基本的に誰でも申し込むことができます。
ちなみに、自己資金要件の「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」とはどういうことか、
創業資金総額700万円の例をあげてみます。
創業するときの必要資金として
店舗の内装費 300万円
機械・設備 100万円
仕入れ代 100万円
その他諸経費 200万円
合計 700万円
という資金計画を立てたとします。
この場合、700万円の10分の1である70万円以上を自己資金として持っていないと、申込みできないということです。
※ただし、自己資金10分の1は「申し込める条件」でしかありません。
実際に10分の1しかなければ、希望金額の融資は厳しいのが現実です。
理想的には3分の1の自己資金があるとよいと言われています。
新創業融資制度の利率は基準金利で2.41~2.80%でした。
それでは、次項から新創業融資制度よりも金利が低い融資制度を見ていきます。
起業する人の年齢や性別で利息を抑える融資制度
日本政策金融公庫に「女性、若者/シニア起業家支援資金」という創業融資制度があります。
女性であれば年齢関係なく、男性は定められた一定の年齢に当てはまると利息が少し安くなります。
概要は以下の通りです。
女性、若者/シニア起業家支援資金の概要
利用できる方
女性または
35歳未満か55歳以上の男性で、
新たに事業を始める、もしくは事業開始後おおむね7年以内の方が対象。
資金の使い道
新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額
7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間
設備資金 20年以内<うち据置期間2年以内>
運転資金 7年以内<うち据置期間2年以内>
利率(年利)
・基本的に特別利率A(基準金利から-0,4%)が適用されます。
・地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて事業を始める方と、
技術・ノウハウ等に新規性がみられる方は特別利率B(基準金利から-0,65%)が適用されます。
・地方創生推進交付金を活用した起業支援金及び移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める方は特別利率C(基準金利から-0,9%)が適用されます。
なお土地取得資金は基準利率となります。
担保・保証人
日本政策金融公庫のホームページでは「お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます」と記載されていますが、原則的に不要です。
解説
女性は年齢関係なく、男性は35歳未満か55歳以上であれば0,4%利息負担を抑えることができます。
条件を満たしている人であれば特別利率Bや特別利率Cが適用されます。
また、前掲した「新創業融資制度」のように自己資金要件はありません(10分の1必要という)。
ですが、審査上、自己資金が少ないと融資が厳しくなるのはこの制度も同じです。
自己資金を多くもっておくと有利になります。
条件に合うと利息が抑えられる融資制度
次に「新規開業資金」という融資制度です。
こちらも日本政策金融公庫の創業融資制度です。
基本的には基準金利ですが、一定の条件を満たすと特別利率が適用されます。
新規開業資金の概要
利用できる方
次のいずれかの要件に該当することが必要です。
1,現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
(1)現在お勤めの企業に継続して6年以上お勤めの方
(2)現在お勤めの企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
2,大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
3,技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める方
4,雇用の創出を伴う事業を始める方
5,産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方
6,地域創業促進支援事業又は潜在的創業者掘り起こし事業の認定創業スクールによる支援を受けて事業を始める方
7,公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める方
8,民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
9,前1~8までの要件に該当せず事業を始める方であって、新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると公庫が認めた方で、1,000万円を限度として本資金を利用する方
10,1~9のいずれかを満たして事業を始めた方で事業開始後おおむね7年以内の方
資金の使い道
新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額
7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間
設備資金 20年以内<うち据置期間2年以内>
運転資金 7年以内<うち据置期間2年以内>
利率(年利)
基本は基準金利が適用されます。
以下の要件に該当する場合は特別利率になります。
なお土地取得資金は基準利率となります。
1~6のいずれかに該当する方は特別利率A(基準金利から-0,4%)が適用。
1. 地域おこし協力隊の任期を終了した方であって、地域おこし協力隊として活動した地域において新たに事業を始める方
2. Uターン等により地方で新たに事業を始める方
3. 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて新たに事業を始める方
4. 地域創業促進支援事業又は潜在的創業者掘り起こし事業の認定創業スクールによる支援を受けて新たに事業を始める方
5. 外国人起業活動促進事業における特定外国人起業家の方で新たに事業を始める方
6. 独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資(転換社債、新株引受権付社債、新株予約権および新株予約権付社債等を含む。)を受けた方
7,8のいずれかに該当する方は特別利率B(基準金利から-0,65%)が適用。
7. 地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める方
8. 技術・ノウハウ等に新規性がみられる方
9に該当する方は特別利率C(基準金利から-0,9%)が適用。
9. 地方創生推進交付金を活用した起業支援金及び移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める方
担保・保証人
日本政策金融公庫のホームページでは「お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます」と記載されていますが、原則的に不要です。
解説
ご利用できる方として1~10の条件がありましたが、多くの場合どれかに該当します。
そのため、誰でも申し込みは可能です。
ただし、特別利率の条件から外れる方は基準金利が適用になります。
特別利率Aの条件にある「認定特定創業支援等事業を受けて」というのは各市町村で行われている「創業スクール」のことです。
創業スクールを修了すると証書がもらえるのでコピーを提出します。
また、この創業スクールを修了すると金利面だけでなく、融資の審査にも好影響があります。
以前お手伝いさせていただいた案件の際に、公庫の職員さんが面談の際に仰っていました。
ソーシャルビジネスで利息が安くなる融資制度
日本政策金融公庫に「ソーシャルビジネス支援資金」という融資制度があります。
ソーシャルビジネスの開業など、社会的課題を解決する事業で金利が低くなる融資制度です。
社会的課題を解決する事業であれば、NPO法人に限らず株式会社や合同会社、個人事業主も融資対象となります。
ソーシャルビジネス支援資金の概要
利用できる方
次の1または2に該当する方が利用できます。
1,NPO法人
2,NPO法人以外であって、次の(1)または(2)に該当する方
(1)保育サービス事業、介護サービス事業等(老人福祉・介護事業、児童福祉事業、障がい者福祉事業等)を営む方
(2)社会的課題の解決を目的とする事業を営む方
資金の使い道
新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額
7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間
設備資金 20年以内<うち据置期間2年以内>
運転資金 7年以内<うち据置期間2年以内>
利率(年利)
基準金利、特別利率A(基準金利から-0,4%)、特別利率B(基準金利から-0,65%)のいずれかが適用されます。
担保・保証人
日本政策金融公庫のホームページでは「お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます」と記載されていますが、原則的に不要です。
解説
ソーシャルビジネス関連の融資は近年伸びており、平成27年度7,746件、平成28年度9,644件、平成29年度10,819件、平成30年度、11,328件と毎年実績を伸ばしている融資制度です。
福祉系の事業は許可や認可を必要とすることが多いです。
また、融資は許可や認可がおりないとできません。
許可が出るまで数ヶ月かかることがあり、許可が出るまでは事業の開始も融資もできません。
そのため、許可が出るまでの人件費等の経費は自己資金で賄う必要があります。
さらに、事業がスタートしても保険制度を使った場合は入金されるまで2ヵ月かかったりします。
支出面と入金面の双方で資金繰りが厳しいことが予想されます。
ある程度まとまった自己資金を準備しておくとよいと思います。
支払った利息を自治体が補助する制度
各市町村に利子補給制度というものがあります。
簡単に説明すると支払った利息の一部が後で補助される制度です。
利息は通常通り支払いますが、払った金額の1%などが自治体から補助されるので、実質的に利息が軽減されるという感じです。
補助率や補助される制度は各市町村ごとに異なるので、開業する市町村のホームページ等で調べる必要があります。
流山市の利子補給の概要
対象となる融資制度
<流山市の創業融資制度>
・創業支援資金
利子補給率
1.85%~2.65%
松戸市の利子補給の概要
対象となる融資制度
<千葉県の制度融資>
・創業資金
・挑戦資金
<日本政策金融公庫の創業融資>
日本政策金融公庫の創業関連資金(特定創業支援事業の証明書の発行を受けたものに限る)【令和2年新設】
公庫の融資を利用して利子補給を受ける場合は創業スクールの修了が条件のようです。
利子補給率
1%以内
利子補給期間
3年以内
解説
市町村ごとに制度の内容が違います。
基本的には信用保証協会の保証が付いた市や県の制度融資が対象となります。
場所によっては松戸市のように日本政策金融公庫の融資が利子補給の対象となる自治体もあります。
利子補給制度を利用する際に注意点があります。
利子補給を受けるためには自治体や商工会議所に申請する必要があります。
申請を忘れたり、しなかった場合は補助されませんので、ご注意ください。
さいごに
以上、金利が低くなる創業融資制度を見てきました。
日本政策金融公庫の創業融資制度を使う場合、審査を担当する職員さんが一番利率の低い制度を提案してくれることが多いです。
特に年齢や性別などはわかりやすいので、年齢、性別の条件に該当すれば、
「女性・若者/シニア起業家支援資金」を勧めてくれたりします。
利息を抑えるのも大事ですが、「必要な金額」を借りることも大切です。
利息負担を抑えるために、借入額を少なくした。
借入額を少なくした結果、開業数か月後に運転資金が不足してしまった。
ということが起こるからです。
これでは事業が続きません。本末転倒になってしまいます。
利息の負担は前掲の創業融資制度で抑えつつ、
事業に必要な金額、特に運転資金は余裕をもって確保するとよいでしょう。