実は、創業時に融資を受けることができます。
創業を支援する公的な融資制度を使うと可能になります。
今回はこの公的な融資制度について解説していきます。
少しでもお役に立つ内容であれば幸いです。
この記事では以下について書いています。
・日本政策金融公庫の創業融資
・信用保証協会の保証が付いた融資制度
創業期に使える融資制度は2種類ある
創業期に使える公的な融資制度とは何でしょうか。
以下の2つの機関を利用します。
1、日本政策金融公庫の融資
2、信用保証協会の保証付き融資
この2つです。
それでは、この2種類の融資手法について説明していきたいと思います。
日本政策金融公庫の創業融資
まずは、日本政策金融公庫の創業融資です。
日本政策金融公庫とは政府系の金融機関で、日本で一番創業融資の実績がある金融機関です。
コロナ以前は毎年2万6千~2万8千社の創業者へ融資を実行しています。
ちなみにコロナ禍の2020年は4万社に創業融資を実行しました。
なぜ4万社に増えたかというと、起業して1年立たないうちにコロナで影響を受けた事業者に融資したことが要因です。
また、創業者向けの融資制度をいくつも用意しており、長期間、低金利での融資を行っています。
当事務所でお手伝いをさせていただいた案件でも日本政策金融公庫を使うことが多く、
難しめの内容でも融資をしていただくケースがあります。
融資も柔軟に対応してくれるため、創業期の融資といえば一番初めに選択肢にあがってきます。
日本政策金融公庫には、国民生活事業部と中小企業事業部があり、
創業期は国民生活事業部を使います。
中小企業事業部は、年商が数億円規模に成長してから使うようになります。
こんな融資制度があります。
それでは、日本政策金融公庫にはどのような融資制度があるのか紹介していきます。
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性は年齢制限なし。 男性は35歳未満か55歳以上の方が対象。
基準利率より0.4%利率が低い、特別利率Aが適用されます。
女性は無条件で、男性は年齢要件に合致すれば通常よりも利率を少し抑えることが可能になります。
・解説
女性や35歳未満・55歳以上の男性にはおすすめです。
新創業融資制度
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方が利用可能です。
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます)を確認できることが条件となっています。
・解説
この制度は、自己資金が10分の1あれば必ず融資されるものではありません。
実際の審査では自己資金が10分の1だと厳しい印象があります。
自己資金が多ければ多いいほど確率的にも金額的にも大きく融資が受けられています。
日本政策金融公庫の審査担当者が言うには「自己資金の理想は3分の1」です。
つまり、審査の土俵に上がるのと実際に勝負になるかは別物ということです。
中小企業経営力強化資金
創業者向けに作られた融資制度ではないのですが、創業融資としても利用できます。
ただし、融資後に税理士など「認定経営革新等支援機関」による指導および助言を受けることが条件となっています。
具体的には、1年ごとに認定支援機関からのモニタリングに答える必要があります。
・解説
この制度が開始された当時は金利も安く、他の制度よりも通過率もよかったため頻繁に使われました。
しかし、最近は金利も上がり、制度としての魅力はあまりなくなりました。
ただ、新創業融資制度などよりも支店決済額が大きいので、1000万円以上の融資が必要な場合は利用する価値があります。
ソーシャルビジネス支援資金
以下の方が利用できます。
NPO法人。
NPO法人以外で保育サービス事業、介護サービス事業等を営む方。
社会的課題の解決を目的とする事業を営む方。
・解説
保育サービス事業と介護サービス事業に当てはまる方は、それだけで特別利率が適用されます。
また特例として、利率を上乗せすると代表者保証を付けずに済ませることも可能です。
ソーシャルビジネスを開業される方にはおすすめの融資制度です。
再挑戦支援資金
以下の全てに該当する方が利用できます。
1.廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人であること
2.廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること
3.廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること
・解説
過去にやむを得ない事情で廃業しており、その時の負債が新しい事業に影響を及ぼさないのであれば申込みができます。
ただし、ハードルは非常に高くなります。
また、融資の金額も出にくいです。
そのため、当初は少ない金額を借りて、業績を伸ばしつつ返済実績を重ねていけば、長期的には大きめの融資も可能になるでしょう。
過去の廃業理由を記載した書面を提出します。この書面の様式は公庫の窓口でもらうことができます。
新規開業資金
基本的には誰でも利用可能です。
・解説
各条件にあてはまる方は利率を少し低くすることができます。
例を挙げると、
・各市町村で開催される「創業スクール」を修了した方は基準金利より0.4%低い特別金利Aが適用されます。
・都内に勤務先があった人が都内以外で起業する場合も金利が少し下がります。
このように、条件を満たしていると利息を抑えることができる制度です。
ちなみにですが、創業スクールを修了した方は、修了したことを証明する書類のコピーを提出しましょう。
同時に創業スクールを修了したことを伝えることもお忘れなく。
創業スクールの話題が出たので補足的なことを追加すると、
創業スクールを修了したという事実は、融資審査にプラスになります。
これは、当事務所のお客様の事例で文京区の創業スクールを卒業した方がいらっしゃいました。
大手町の公庫で面談があり、私も面談に同席したのですが、公庫の担当職員からこんな事を言われました。
「創業スクールを修了していると、審査にプラスになります」
ということで、創業スクールを卒業したら忘れずに伝えましょう。
事業計画書の経歴欄に書いてしまうとよいでしょう。
以上、融資制度の名称と特徴をお伝えしてきました。
制度がいくつもあるので、どれにするか迷うかもしれません。
しかし、そこはあまり神経質にならなくても大丈夫です。
審査担当者がお客様に一番有利な制度を提案、適用してくれることが多いです。
利用の流れ
日本政策金融公庫を利用する時の大まかな流れは以下のようになります。
1,借入申込書と創業計画書、その他事業の内容がわかる資料を最寄りの日本政策金融公庫に提出する。
2,申込みから約1週間後に審査担当者から電話があり、面談日時の調整と当日の持ち物を伝えられる。
3,日本政策金融公庫の支店で面談。面談時間は約1時間ほど。
4,面談から約一週間後に融資の可否が電話や郵送で知らされる。混み具合や審査が難航した場合はそれ以上かかるケースも。
5,融資がOKなら契約書が送付されてくる。
6,契約書に必要事項を記入し郵送。
7,郵送後、数日以内に自分が指定した金融機関に入金される。
だいたい申込みから入金まで1ヵ月程度かかります。
混んでる場合もありますので、1ヶ月半〜2ヶ月くらいの余裕をみておくと良いでしょう。
日本政策金融公庫のメリット
日本政策金融公庫は申し込みから融資まで約1ヶ月と比較的早めです。
日本政策金融公庫のデメリット
日本政策金融公庫はメインバンクにはなりません。
そのため、将来的にメインバンクを作ってプロパー融資を考えている方は、民間金融機関を使う必要があります。
創業期に公庫を使いつつ、徐々に民間の銀行と融資取引を始めていくと良いでしょう。
信用保証協会の保証付き融資
2つ目は「信用保証協会の保証付き融資」です。
信用保証とは、
各都道府県にある信用保証協会が、融資を受ける人の債務を保証することで、
金融機関が融資をしやすくするものです。
保証を受けると、金融機関のリスクが軽減するので融資がしやすくなるわけです。
(万が一返済されなくても金融機関は損をしない)
この保証付き融資も長期間、低金利で借りることができます。
ただし、日本政策金融公庫と違い信用保証料というのを支払う必要があります。
信用保証付きの融資は全国共通の制度ではないため、各都道府県や市区町村で融資の条件が違います。
また、市区町村の融資制度の特徴として
信用保証料を補助してくれたり、利息を補助してくれたりする自治体もあります。
ただし、多くの場合融資までの期間が長くなる傾向にあります。
信用保証協会という公的な機関が付くことによって、信用力に乏しい創業企業が融資を受けられるようになります。
信用保証協会の保証を受けることが条件
利用するには各都道府県にある「信用保証協会」という機関から保証を受ける必要があります。
千葉県なら「千葉県信用保証協会」です。
信用保証協会から保証を受けることができれば、希望の金融機関から融資を受けることができます。
ここで注意したいのは、お金を出すのは銀行などの金融機関です。
信用保証協会は保証するだけであり、直接お金は出しません。
また、融資制度も「県」の制度「市町村」の制度が用意されています。
とくに市町村の制度は、自治体ごとに条件が違うので調べる必要があります。
(市町村によっては融資制度がないところもあります)
千葉県の創業融資制度
千葉県全域で利用できる2つの創業融資制度をご紹介します。
「創業等関連保証」
・利用できる方
(1)事業を営んでいない個人で、融資金額と同額以上の自己資金を有し、1ヶ月以内に事業を開始する具体的計画を有する方
(2)事業を営んでいない個人で、融資金額と同額以上の自己資金を有し、2ヶ月以内に新たに会社を設立し、事業を開始する具体的な計画を有する方
(3)事業を開始してから5年未満の個人事業者
(4)設立の日から5年未満の会社
・限度額
1500万円以内
・保証期間
10年以内(据置1年以内を含む)
・返済方法
分割返済
・利率
金融機関所定利率
・信用保証料率
0.8%
・連帯保証人
法人代表者を除き保証人は不要
・解説
(1)と(2)に当たる方は自己資金と同額までしか借りることができません。
例えば、自己資金が400万円なら融資額も400万円が上限となります。
「創業関連保証」
・利用できる方
(1)事業を営んでいない個人で、1ヶ月以内に新たに事業を開始する具体的計画を有する方。
(2)事業を営んでいない個人で、2ヶ月以内に新たに会社を設立し、事業を開始する具体的な計画を有する方。
(3)事業を開始してから5年を経過していない個人事業主、法人。
・限度額
2000万円以内
・保証期間
10年以内(据置1年以内を含む)
・返済方法
分割返済
・利率
金融機関所定利率
・信用保証料率
0.8%
・連帯保証
原則として法人代表者以外の保証人は不要
・解説
こちらの制度は自己資金と同額までという条件がありません。
そのため、自己資金額を超える金額の融資も可能になります。
例えば、自己資金が400万円で800万円の融資も可能になる制度になっています。
以上、県の融資制度を使う場合はどちらかの制度を使うことになります。
また、県の制度ではなく市町村の制度を使う場合は、ここに記載した制度とは別の制度が用意されています。
お住いの市町村の制度を調べてみましょう。
市町村の融資制度の特徴
市町村の融資制度は各々違いますが、多くの自治体で共通する部分もあります。
よく目にするのが「利子補給」と「信用保証料の補助」です。
「利子補給」というのは、銀行に支払った利息の一部を、後で自治体が補助してくれるものです。
そして、「信用保証料の補助」というのは、融資を受けるときに信用保証協会に「信用保証料」を払うのですが、その信用保証料の一部を自治体が肩代わりしてくれます。
このように、市町村の融資制度には特典が用意されていることが多いです。
その反面、融資までの手続き工程が増えるので、入金まで長期間かかります。
最低でも3ヵ月はみておいた方がよいでしょう。
融資までの流れ
県の融資制度を利用する場合は以下のような流れになります。
1,近くの民間金融機関(銀行や信金)に創業計画書を持参し、融資を申し込む。
2,融資を申し込んだ金融機関の店内稟議にかけられる。
3,店内稟議に通過したら、信用保証協会に案件が上げられる。
4,信用保証協会との面談日を調整する。
5,信用保証協会の職員と面談。
6,信用保証協会の審査の可否が決まる。
7,保証協会がOKがでたことを金融機関から伝えられる。
信用保証協会のメリット
融資は銀行などの民間金融機関が行うので、上手く利用していくとメインバンクを作ることができます。
定期的に実績や今後の予定を報告するなどして関係を構築していくと、融資を提案されることもあります。
このような時は資金調達がしやすくなります。
保証協会のデメリット
日本政策金融公庫に比べて審査期間が長くなります。
また、信用保証料を払う必要があります。
公庫に比べると提出する書類が多いです。
さいごに
創業期の融資の方法としては基本的に「日本政策金融公庫」と「信用保証協会の保証付き融資」の2種類です。
融資する機関は違いますが、審査方法などは基本的に同じと考えていただいて大丈夫です。
また、一度融資を受けて返済実績を作っていくと、2回目以降は借りやすくなります。(経営状況にもよりますが)
また両方とも公的機関なので、災害時や非常時に特例がでることがあります。
最近ではコロナ対応融資がそれにあたります。
コロナ融資でもすでに融資取引をしている事業者は、取引がない事業者よりもすんなりと借りられた印象です。
創業時はどちらか一方の融資かもしれませんが、業歴を重ねるごとに取引金融機関を増やして、資金調達手法の多様化を図れると良いでしょう。必要な時に必要なだけ資金を調達できるような環境を構築していけると良いですね。