事業を始めるには多くのお金がかかります。
そのため、開業のための資金を調達する必要があります。
その開業資金の調達に使う制度が「創業融資制度」です。
今回は創業融資制度とはどのようなものか書いていきす。
少しでもお役に立つ内容であれば幸いです。
この記事では以下の内容について記載しています。
・創業融資は日本政策金融公庫と信用保証協会
・創業融資を受ける理由とは?
・創業融資は受けるべき?
創業融資は日本政策金融公庫と信用保証協会
創業融資を簡単に説明すると、
これから事業を始める人や事業を始めて間もない人に対して、金融機関が事業資金を貸し出すものです。
その創業融資を利用できる機関には「日本政策金融公庫」と「信用保証協会の保証付き融資」の2つがあります。
これらの機関とはどのような所なのかまとめました。
日本政策金融公庫とは?
日本政策金融公庫は政府が100%出資している株式会社です。
事業資金の融資や教育ローンを扱っている政府系の金融機関になります。
そのため、そのときの政策方針によって融資姿勢が変化します。
ここ数年は、政府が創業やソーシャルビジネス、事業承継を課題に挙げているため、この分野の融資が積極的に行われています。
毎年全国で2万6千〜2万8千件ほど創業融資を実行している公的な金融機関です。
創業融資制度が豊富
また、さまざまな創業融資制度も用意されています。
たとえば、
・新創業融資制度
・新規開業資金
・女性・若者・シニア起業家支援資金
・中小企業経営力強化資金
・ソーシャルビジネス支援資金
など、申込者の状況によって制度が適用されます。
例を挙げると、女性の方は「女性・若者・シニア起業家支援資金」が適用され、基準金利よりも少し利息負担が軽くなります。
他にも、前職の勤務先が都内で開業場所が千葉県内といった場合は「新規開業資金」が適用され、利息が少し低くなります。
このように、申込者に有利な制度が適用されます。
信用保証協会とは?
各都道府県に信用保証協会という組織があります。
ざっくり説明すると、信用保証協会は融資を受けようとする際に、申込者の連帯保証人になるようなイメージです。
(正確には少し違います)
信用保証協会の保証を得ることができれば、銀行から融資を受けることができます。
たとえば以下のような流れになります。
・銀行に融資の申込みを行う
⇓
・銀行が店内稟議にかける
⇓
・店内稟議に通った後、銀行が保証協会に案件を持ち込む
⇓
・保証協会が審査をする
⇓
・保証協会の審査に受かる。
⇓
・融資を申し込んだ銀行に口座が作られ、その口座に入金される。
という感じです。
保証協会の保証が条件になる理由
なぜ銀行が保証協会の保証を条件とするかというと、
銀行が融資したお金を回収不能となった場合、回収できなかったお金を保証協会が銀行に補填するからです。
銀行は保証協会からお金が入るのでリスクがありません。そのため、保証を条件に融資をしているのです。
単純化した例をあげると、
A銀行がY社に500万円を融資していますが、Y社が倒産したため500万円が回収不能になりました。
回収できなかった500万円と同じ金額が保証協会からA銀行に補填されます。
A銀行は500万円が戻ってきたので損失をだしていないということになります。
ただし、このあとY社の代表者には保証協会から取り立てがあります。
このように保証協会があれば銀行は損をしないので創業融資を実行できるのです。
保証協会は少し複雑
保証協会は各自治体と連携した融資制度も用意しています。
市町村と保証協会と金融機関の3者が連携して融資制度をもうけている所があります。
市区町村の制度は地域差があり、A市には融資制度があるけどお隣のB市にはない。というのもあります。
市区町村ごとに融資を受けるための条件が違うので、各市町村のホームページを調べる必要があります。
保証協会と日本政策金融公庫の違い
保証協会を使うと、信用保証料というのが徴収されます。
対して、日本政策金融公庫に保証料はありません。
また、融資までの時間も違います。
日本政策金融公庫は申し込みから入金まで約1ヶ月程度。
ですが、保証協会は公庫よりも時間がかかることが多く、申し込みから入金まで、2ヶ月〜2ヶ月半と少し長めになります。
市町村の制度を使うとさらに長期化する傾向があるので、かなり早めに動く必要があります。
他にも、申し込んだ金融機関により違うのかもしれませんが、保証協会の方が様々な書類を求められる傾向があります。
このように違いがあるので、どちらを使うか注意が必要です。
創業融資を受ける理由とは?
では、実際に融資を受けた人はどのような理由で融資を申し込んだのでしょうか?
いくつか例を挙げてみます。
店舗で開業するために融資が絶対条件
自己資金を貯めてきたものの、開業するためには内装工事費などが高額なので、お金を借りる必要がある。
融資を受けることが開業の前提条件となっているようなケース。
自己資金だけでも開業できるが余裕を持ちたい
自分の貯蓄だけで開業自体はできるが、開業後の資金繰りを考慮し、運転資金数ヶ月分を借りて余裕を持たせるケース。
仕入れ資金が必要
ネット販売など無店舗での販売だが、先に仕入れが必要になるので、そのお金が必要。
自己資金のみで開業したが、売上げが急増したため、経費も増えた
IT業など受注件数が増えたので、外注に出す必要がある。
外注費を支払う資金がないため、融資で補う必要がでてきたケース。
開業して数ヶ月だが業績が良くない
自己資金のみで開業し3ヵ月経つが売上げが低迷。
そこで、集客支援もするフランチャイズに加盟して業績アップを狙うため、FCの加盟金を融資で賄うといったケース。
以上のように、創業融資を受ける理由はさまざまです。
こんな借り方ができる
融資を受けるときにどんな条件で借りることができるのでしょうか。
たとえば、以下のような借り方をすることができます。
運転資金のみの場合
必要経費の約3ヶ月分で申し込むことが多いです。
それにプラスして、余裕資金を少し上乗せして借りることもあります。
返済期間は7年。そのうち当初6ヶ月は利息のみを支払う期間を設定し申し込みます。
運転資金+設備資金の場合
運転資金は上記と同じく、必要経費の3ヶ月分。
それにプラスして、設備資金は業者から取り寄せた見積書をもとに金額を決めて申込みをします。
設備が高額になる場合は減価償却年数に合わせた返済期間で申し込みます。
例えば、内装工事などがある場合は、減価償却期間に合わせて10年返済(当初6ヶ月は利息のみ支払い)で申し込むことが多いです。
運転資金の合計+設備資金の合計金額が融資申込み金額になります。
このように運転資金のみ、運転資金と設備資金を同時にといった借り方ができます。
また、それだけではなく設備資金だけというのもあります。
借入れから数か月間は利息のみの支払にできる「据置期間」も設定できるので、これも含めて申し込みをすると良いでしょう。
創業融資は受けるべきなのか
そんな創業融資は受けるべきなのか。
いろいろな意見がありますが、個人的には融資は受けておいた方が良いと考えています。
なぜかというと、借りたいときに限って借りられないことがあるからです。
たとえば、こんなケースがよくあります。
自己資金だけで開業して、半年後に手元資金が少なくなってから融資を申し込む場合です。
この場合のように、半年後に手元資金が少なくなるというのは、売上が低迷して赤字が累積してしまっているというケースが多いです。
開業1年未満で赤字が続いている会社への融資は、これから開業する方と比べると、とても難しいのが現状です。
実績によっては融資が受けられないこともあります。
貸す側からすれば「業績が良くない会社に融資をしても返済されるのだろうか」という心配があるわけです。
こうして融資を申し込んで否決されたら取り返しがつきません。
そんな状態に陥るのであれば、開業前や開業直後のまだ営業実績が出ていない段階で創業融資を申し込んだ方が賢明でしょう。
創業融資のお金で資金的な余裕を持っていれば、
開業後に赤字になったとしても、資金的余裕があるうちに試行錯誤を繰り返して徐々に黒字化する。
という、時間的な余裕もできたりします。
こんな事例もありました。
開業時に400~500万円の自己資金で開業した方がいらっしゃいました。
1年ほど営業しましたが毎月赤字になり、自己資金が残り少なくなっていました。
そこで、融資を考えたのですが1期目の決算状況も大幅な赤字となり、融資は厳しいという結論になりました。
このケースの場合、開業時であれば700〜1000万の融資を受けられても不思議はありませんでした。
仮に融資を受けていれば、1年後に苦労していなかったでしょう。
資金に余裕があるうちに改善策が打てるでしょうし、そのためのお金もあったことになります。
余裕を持つために創業融資を受けて「運転資金を多めに確保」しておく。
というのも創業期の大事な点のひとつだと思います。
さいごに
創業融資は基本的に日本政策金融公庫と信用保証付きの融資を使うことになります。
このどちらか、又は両方を使い資金調達が可能です。
また、借りるにしても個人の状況により限度額があります。
限度額はその人の自己資金や経歴、事業内容によって決まってきます。
そのため、限られた金額の中では、設備資金はなるべく抑え、運転資金を多めに借りておくことが個人的にはおすすめです。