株式会社の方が創業融資を受けやすい。
このようなことを言われることがあります。
本当にそうなのでしょうか。
実際はどうなのか書いてみます。
創業段階の融資は法人だから借りやすいということはない
「株式会社の方が融資を受けやすいですよね?」
創業融資のお手伝いをさせていただいていると、このような質問をされることがあります。
ですが、創業時においては法人だから借りやすいということはありません。
創業時は法人も個人事業主も同じ
これから開業する人や開業直後に融資を受ける場合、法人と個人事業でどちらが有利ということはありません。
これは私がお付き合いしている日本政策金融公庫の職員さんが話していました。
さらに、日本政策金融公庫のホームページのQ&Aにも記載されています。
Q4 個人での創業で融資申込するのと法人での創業で申込するのに違いはありますか。
A 融資申込について、個人と法人とで大きな違いは特にありません(法人で申し込む際には履歴事項全部証明書または登記簿謄本が必要になるくらいです)融資を受けるうえでどちらが有利ということはありません。
日本政策金融公庫のホームページから抜粋
以上のように記載されています。
実際、当事務所が創業融資のお手伝いをさせていただいた方の6割~7割は個人事業の方でしたが、無事に融資を受けることができています。
法人も個人事業主も審査基準は同じ
創業時の融資では法人も個人事業主も審査の基準は同じです。
どちらも基本的には自己資金、開業業種の経験、事業計画書、個人的な債務などを重点に審査をしています。
審査の条件を満たせなければ、法人でも審査落ちしてしまいます。
大切なのは法人か個人事業かということよりも、審査の基準に達しているかどうかです。
これで審査の可否が決まります。
個人事業主で審査基準を満たしている例
たとえば以下のような個人事業主の方は創業融資を受けることができます。
属性:個人事業で開業する30代の男性
融資希望額:800万円
自己資金:250万円
開業業種の経歴:10年
個人的債務:住宅ローンのみ
このような条件であれば創業融資を受けることができます。
なぜ融資ができるかというと、希望額に対して自己資金が十分にあること。開業業種の経験が10年と豊富であること。個人的債務にカードローンや消費者金融といった高金利の借入れがないこと。
というように条件を満たしているので創業融資を受けることができます。
もちろん事業計画書を作りこんでいくのは大前提となりますが。
法人で審査基準を満たしていない例
逆に以下のような株式会社の方は創業融資が厳しくなります。
属性:株式会社で開業する40代の男性
融資希望額:600万円
自己資金:50万円
開業業種の経験:3年
個人的債務:カードローン残債の200万円
このような条件だと株式会社でも創業融資は厳しいです。
理由としては、融資希望額に対する自己資金の少なさとカードローンの残債の多さが原因です。
上記のように個人事業でも条件を満たせば融資を受けられます。
反対に条件が整わなければ法人でも融資を受けることはできません。
法人の方が個人事業より借りやすくなるときとは?
創業時は個人事業主と法人でどちらが有利ということはありませんでした。
ですが、法人の方が個人事業主よりも借りやすくなるときがあります。
それはどのような時なのでしょうか。
何年も事業をすると法人の方が借りやすい
創業して2期、3期と事業をしていくと法人の方が借りやすくなってきます。
ある程度業歴があると法人の方が有利のなるのです。
なぜ業歴がある場合法人の方が融資を受けやすくなるのでしょうか?
法人が借りやすくなる理由
理由の一つに決算書があります。
事業をしていくと決算期には必ず決算をします。
個人事業主であれば確定申告をする時に決算の作業があります。
どちらも決算をして一年間の業績を出すわけですが、ここに差があります。
会社の決算書と個人事業主の決算書を比べると、信ぴょう性や記載内容の細かさなどで差があります。
会社の決算書は大抵の場合税理士が作成しており信頼性が高いうえ、各項目の内訳が詳しく記載されているため、その会社の実態が把握しやすくなっています。
逆に個人事業主の決算書は代表者が自分自身で作成していて、プライベートで支出したものも費用計上するなど事業と家事が混同されることも多く、経営状態が把握しにくいです。
そして、決算書の内容も勘定科目の内訳などが記載されていないので、実態が把握できず、審査がしにくいということがあります。
もう一つの理由として
銀行員は法人の決算書の方が慣れているというのもあります。
株式会社など法人の決算書より個人事業主の決算書をみる機会が少ないようです。
以上のような理由から法人の方が有利になります。
銀行の融資は決算書の内容で7~8割決まるといわれています。
業績の良し悪し以外では、「書類の差」が審査の差になっているといえます。
将来の融資も考えての法人設立
以上のように事業を開始して数年すると、法人の方が借りやすくなってきます。
資金調達という面で見ると、スモールビジネスだから開業時の融資だけで十分。なので個人事業主のまま営業していくという判断もあると思います。
逆に事業を大きくするために継続的に借り入れが必要ということであれば、株式会社にして決算書を早い段階から作り、少しでも借りやすくしておくという判断もあるかもしれません。
いずれにしても、将来的な資金調達のことも判断材料のひとつとして、法人にするか個人事業にするか検討すると良さそうです。
まとめ
創業時点の融資では法人が個人事業主よりも借りやすいということはありません。
逆に、個人事業主だから創業融資を受けにくいという心配もありません。
大切なのは創業融資の審査の基準に届いているかどうかです。
届いていれば個人事業主でも法人でも融資はされます。
ただし、数年営業して決算書ができていくと法人の方が有利になります。
法人の決算書の方が企業の実態をつかみやすいので、ここで差がでてきます。
これが、法人の方が借りやすいと言われる大きな理由です。
弊所では創業融資の基準に届いているかも含めてご相談を承っております。
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