創業融資では運転資金を借りることができます。
その際、運転資金をいくら借りればよいのか悩むことがあります。
設備資金のように具体的な金額が計算しにくいことも悩みの一因だと思います。
そこで今回は運転資金の計算方法を解説していきたいと思います。
借入額を検討する際の材料のひとつにでもなれば幸いです。
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- なお、この記事では以下の内容に触れています。
- 運転資金の計算方法
- 計算方法の事例
- 運転資金はできるだけ多く借りる
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運転資金の計算方法
運転資金は必要経費の3ヶ月分
運転資金を試算する際は経費の1ヶ月分などではなく3ヶ月分は欲しいところです。
なぜなら、なるべく自由に使えるお金を手元に持っておきたいからです。(理由は後述します)
日本政策金融公庫や信用保証協会は3ヶ月分の経費であれば普通に認めてくれます。
業種によっては4,5ヶ月分借りられることもあります。
この必要経費を計算するには「損益計画書」をひと月単位で作るのがおすすめです。
損益計画書には毎月の売上げ、原価、粗利、諸経費、営業利益、営業外損益、経常利益を試算できます。
そのうち、原価と諸経費の3ヶ月分を運転資金として申し込みます。
運転資金は少なめではなく、ゆとりをもって借りておくことが肝要です。
計算方法の事例
前項で運転資金は必要経費の3ヶ月分借りると書きました。
ではどのように計算するかシュミレーションしてみましょう。
ネットショップ(個人事業)を例に挙げてみます。
当初4ヶ月分の損益計画は以下のとおりです。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | |
売上 | 620,000 | 900,000 | 1,240,000 | 1,550,000 |
原価(原価率40%) | 248,000 | 360,000 | 496,000 | 620,000 |
売上総利益 | 372,000 | 540,000 | 744,000 | 930,000 |
手数料(売上30%) | 186,000 | 270,000 | 372,000 | 465,000 |
広告宣伝費 | 46,000 | 69,000 | 92,000 | 115,000 |
旅費交通費 | 4,000 | 4,000 | 4,000 | 4,000 |
通信費 | 3,000 | 3,000 | 3,000 | 3,000 |
事務用品費 | 2,000 | 3,000 | 4,000 | 5,000 |
接待交際費 | 5,000 | 5,000 | 5,000 | 5,000 |
燃料費 | 3,000 | 3,000 | 3,000 | 3,000 |
研修費 | 20,000 | 20,000 | 20,000 | 20,000 |
水道光熱費 | 2,500 | 2,500 | 2,500 | 2,500 |
諸会費 | 7,750 | 7,750 | 7,750 | 7,750 |
荷造運賃費 | 10,000 | 15,000 | 2,0000 | 25,000 |
諸経費合計 | 289,250 | 402,250 | 533,250 | 655,250 |
営業利益 | 82,750 | 137,750 | 210,750 | 274,750 |
支払い利息 | 6,250 | 6,250 | 6,250 | 6,250 |
経常利益 | 76,500 | 131,500 | 204,500 | 268,500 |
上記の計画から以下が計算できます。
仕入れ 110万円
(当初の原価3ヶ月分)
諸経費 156万円
(諸経費合計約3,5ヶ月分)
合計で266万円を運転資金として融資を受けます。
融資の他に自己資金があればさらに運転資金に余裕を持つことができます。
運転資金のほかに設備資金を上乗せして、自己資金とバランスをとった金額が正式な申込み金額になります。
なぜ3ヶ月分の必要経費を運転資金として計算したのか。
次項ではその理由を書いていきます。
運転資金はできるだけ多く借りる
なぜ必要経費の3ヶ月分にしたのか。
色々な意見があると思いますが、運転資金は必要経費の1ヶ月分などではなく、借りられるだけ借りておきたいからです。
現金をたくさん持っていて困ることはありません。
運転資金を多く借りる理由
運転資金を多くする理由は以下です。
現金がある限り倒産しない
銀行口座に現金があり、スタッフや取引先に支払いができる限り倒産はしません。
どんなに赤字であっても現金がある限り事業を続けていくことができます。
逆に損益上は利益がでて黒字でも、手元の現金がなくなってしまえば倒産してしまいます。
いわゆる「黒字倒産」です。
なので、特に赤字になりやすい創業期は手元資金を厚くすることが大事です。
想定外の出費は必ずある
いざ開業すると思いもしなかった出費があります。
たとえば、「内装工事費が見積もりよりも高くなってしまった」「広告費が予想以上にかかる」「予定していなかった機材や備品を購入しないといけなくなった」などです。
このように予定していなかった支払いにも対応できるように、余裕資金をもっておきたいところです。
少し失敗しても改善できる
開業してみたものの当初の予定通りにいかないことは多いです。
たとえば、考えていた集客方法を実行したものの、想定した結果にとどかないということはよくあります。
そのような時でも、運転資金に余裕があれば次の策を講じることや改善ができます。
逆に現金が少なければ手持ち資金の範囲内の改善しかできなくなり、選択肢が少なくなってしまいます。
改善する選択肢を増やすためにも手持ちの現金は多くしておきたいです。
初回借入れから1年以内の追加融資は難しい
開業時に融資を受けてから1年以内に追加融資を受けることは難しいです。
たとえば、当初公庫から融資を受けて1年経たないうちに2回目の融資を申し込むなどです。
融資を申し込んでも「1年返済してから」とか「もう少し様子をみさせてほしい」というような回答をされることが多くあります。
業歴が浅いと、たとえ営業実績が良くても与信が追いつかないということが起こるのです。
また、公庫の面談に同席していると「1年返済すればまた借入れは可能です」と担当者に言われことがあります。
これは裏を返せば「1年返済が終わるまで融資できません」ということになります。
なので、最低でも1年は返済してからでなくてはいけません。
抑えて借りると追加融資は難しい
上記のように1年以内に追加で融資を受けることは難しくなります。
当初少ない金額で運転資金を借りて、その後の追加融資で断られたら身動きが取れなくなってしまいます。
であれば、そうなる前に最初の借入れで運転資金を借りられるだけ借りておく方がよいといえます。
手元資金を厚くして創業期を乗り切る
創業期は新規のお客様を集客しなければなりません。
固定客がある程度増えるまではどうしても時間がかかってしまいます。
そのため、開業から数ヶ月は赤字が続くこともめずらしくありません。
赤字の期間を借り入れで補てんして、早く黒字に転換させる。
資金的余裕が多いほど、黒字化までに必要な期間は長くできます。
売上げが不安定な創業期を乗り切るためにも運転資金を多く借りておくとよいと思います。
仮に早く黒字化を達成しできれば、借り入れたお金は淡々と返済していけばよいですし、余裕があれば一括の返済も可能になっています。
さいごに
運転資金の金額は今回ご紹介した内容以外の考え方もあると思いますが、
わかりやすい計算方法を解説いたしました。
まとめると
・運転資金はできるだけ多く借りる。
・必要経費の3ヶ月分は融資を受けたい。
・具体的な金額を出すには損益計画書を月次で作る。
最後までお読みいただきありがとうございました。
少しでもお役に立つ内容であれば幸いです。