軽貨物運送業は、個人や小規模法人でも参入しやすい業種であり、我孫子市でも多くの事業者が地域の物流を支えています。
しかしその一方で、取引先からの単価の圧力や燃料費の高騰、人手不足といった問題に直面し、経営が安定しないケースも少なくありません。特に創業から数年の企業にとっては、営業実績が十分でない中での事業継続は大きな課題となります。
そのような状況の中、「赤字決算」で金融機関から融資を受けることは非常にハードルが高くなります。
決算書がマイナスであれば、「返済能力がない」と見なされてしまう可能性があり、多くの事業者が融資審査の段階で足止めを食ってしまうのが現実です。
それでもなお、「新たなチャンスをつかみたい」「事業を次のステージに進めたい」と前を向く中小事業者は少なくありません。今回ご紹介するのは、まさにそのようなケース。
松戸市で軽貨物運送業を営むAさんが、赤字・債務超過という逆風の中、日本政策金融公庫から約400万円の融資を受け、見事に事業を成長させた成功事例です。
本記事では、行政書士の立場から、どのようにしてこの融資を実現したのかを詳しく解説していきます。
赤字企業が融資に成功した背景
軽貨物運送業のAさんの事業概要と課題
Aさんは松戸市にて軽貨物運送業を営む30代の男性で、合同会社を設立して2年目というまだ若い事業者です。創業期の経費負担や単価の低さが影響し、1期目の決算は営業赤字、さらに貸借対照表上では債務超過の状態でした。
また、手持ち資金も数十万円とわずかで、日々の運転資金にも余裕がない状況でした。
さらに、数十万円のカードローンも抱えており、外部から見れば「融資は難しいのではないか」と思われる状態にありました。
このような状況では、金融機関も慎重な対応を取らざるを得ず、一般的には融資審査を通過するのが難しいとされます。
大手運送会社との取引拡大と収益改善の兆し
そんなAさんの事業に転機が訪れたのは、創業から約1年が経過した頃でした。
これまで大手運送会社の「2次下請け」として活動していたところから「1次下請け」へと昇格したことで、単価が大幅に上昇し、月間の売上げが約200万円まで伸びるようになったのです。
この変化により、利益率も改善し、今後の見込みとしては黒字転換が現実的に期待できる状況となりました。
事実、直近数ヶ月の実績をベースに事業計画を立てたところ、安定的な収益と返済能力を証明できる内容に仕上がりました。
このような「今後の成長可能性」が、日本政策金融公庫の審査でも前向きに評価される大きな要因となったのです。
赤字・債務超過でも融資を引き出すための準備とは?
行政書士による事業計画書作成と資金繰りの見直し
Aさんのように赤字かつ債務超過の状況でも、適切な準備を行えば融資の可能性は十分にあります。
今回のケースでは、行政書士である筆者がAさんと面談し、事業の実態と今後の見通しを丁寧にヒアリングしました。
その上で、現在の売上増加傾向や今後の収益性を数値化した「現実的な事業計画書」を共同で作成しました。
事業計画書の作成では、単に希望する融資額を記載するだけでなく、「どのような根拠があって返済可能なのか」を示すことが重要です。
Aさんの場合、売上単価の上昇と業務量の増加という明確な成長要因があり、それを反映した形で事業の収支見込みを構築しました。
加えて、資金繰り表を作成し、資金の流れを月ごとに可視化。
融資後にどのように資金を活用し、どのタイミングで返済原資が確保できるのかを明確にすることで、日本政策金融公庫に対して説得力ある資料を提出することができました。
実績に基づく損益計画書の重要性
金融機関が特に重視するのが、「今後の数字にどれだけ信頼性があるか」です。
今回のケースでは、直近3ヶ月の売上実績が安定して200万円前後に達していたため、それを基礎とした控えめな損益計画書を作成しました。
この損益計画書では、売上げを過剰に見積もることなく、経費をきちんと計上し、最終的にどれだけの利益が残るかをシミュレーションしています。
結果として、「この数字なら無理なく返済が可能である」と判断され、赤字決算にもかかわらず融資が実現しました。
損益計画書の信頼性を高めるため、大手運送会社からの支払明細書など、売上向上の根拠資料も提出。こうした「実績に基づく数値」の積み上げが、金融機関の信用を得る鍵となりました。
日本政策金融公庫とのやり取りと融資決定までの流れ
職員との事前協議で見えた可能性と評価ポイント
融資獲得にあたっては、単に書類を提出するだけでなく、事前に日本政策金融公庫の職員と情報共有を行うことが非常に効果的です。
今回も、当事務所が日頃からやり取りをしている担当職員に、Aさんの現状や事業の見通しを丁寧に説明しました。
赤字決算かつ債務超過という状況は確かにネガティブ要素ですが、実質的には代表者からの借入が資本に近い性質であること、そして売上が上向いていることを伝えることで、「融資の可能性は十分ある」との見解を得ることができました。
金融機関が評価するポイントとして、「過去」だけでなく「未来」の見通しが合理的であるかが重視されます。Aさんの場合は、売上アップの根拠が明確であり、返済計画にも無理がなかったことが、職員から前向きに評価される決め手となりました。
融資面談から資金調達成功までのステップ
書類が整った後、日本政策金融公庫に正式な融資申請を行い、後日面談が実施されました。
面談では、提出した事業計画書や損益計画書の内容について確認されるとともに、Aさん自身の事業に対する姿勢や今後の展望が問われました。
この面談では、「なぜ資金が必要なのか」「融資を受けて何をするのか」「どうやって返済していくのか」という3点が特に重視されます。Aさんは、一次下請けに昇格したことで外注先の確保が急務となり、そのために資金が必要であることを具体的に説明しました。
結果として、赤字であることを理由に一部減額はあったものの、400万円弱の運転資金の融資が決定しました。
手持ち資金が乏しく信用状況も厳しい中での融資成功は、事前準備と戦略的な資料作成、そして丁寧なコミュニケーションの賜物です。
軽貨物運送業が月商450万円を達成した要因
外注先の確保と事業拡大の効果
融資により確保した資金を活用し、Aさんがまず取り組んだのは外注先の確保でした。
1次下請けに昇格したことで単価が上昇したため、ここで取扱量も増やせれば大きなチャンスとなります。
ここで融資金を活かし、タイムリーに外注先を確保できたことが、安定した取引と継続的な売上の増加に繋がりました。
外注化によって業務の効率化と対応可能な案件数が増えた結果、大手運送会社との取引がさらに拡大し、月間売上げは半年後には450万円を超えるまでに成長しました。
これは融資を通じて事業基盤を強化し、持続的な成長を実現した好例といえます。
黒字化に向けた実践的な運用と結果
Aさんは、事業計画書の段階で黒字化を見据えた損益計画を作成していましたが、その内容を「絵に描いた餅」にせず、実際の運営にも反映させていきました。
売上げの増加に応じて経費管理を徹底し、無理のない人員配置と経費配分を行うことで、利益をしっかり確保する体制を築きました。
また、カードローンの返済も計画的に進め、信用状況の改善にも努めました。
こうした一連の取り組みによって、Aさんの事業は見事に黒字化を達成。金融機関に対しても「この会社は着実に改善している」という印象を与えることに成功しました。
融資を活かし、堅実に事業を拡大してきたAさんの姿勢は、多くの中小事業者にとって参考になるはずです。
まとめと結論(我孫子市の事業者の方へ)
赤字決算や債務超過といった経営状況でも、希望を捨てずに準備を重ねることで、融資を受ける道は開ける可能性があります。
今回ご紹介したAさんの事例は、その好例です。松戸市という地域で、軽貨物運送業という個人経営に近い形態ながら、堅実に売上を伸ばし、結果として月商450万円超を実現しました。
融資成功のカギは「準備」と「現実的な計画」
Aさんが融資を受けることができたのは、綿密なヒアリングをもとに作成した事業計画書、資金繰り表、損益計画書など、数値に基づいた現実的な資料があったからです。
金融機関が知りたいのは、「この会社にお金を貸して本当に返してもらえるのか」という点です。その疑問に対し、数字と根拠をもって答えることができれば、たとえ赤字でもチャンスはあります。
専門家のサポートを受ける重要性
とはいえ、こうした資料を自力で整えるのは簡単ではありません。
金融機関が求める視点を理解し、それに応じた計画を立てるには専門的な知識が必要です。行政書士などの専門家に相談することで、事業者自身の視点では気づけない強みを引き出し、融資成功へと導くことが可能になります。
我孫子市で軽貨物運送業を営む方、または同様の悩みを抱える中小企業の皆様にとって、今回の事例が前向きな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
行政書士に相談する理由とお問い合わせ情報(我孫子市エリアに対応)
行政書士ができることとサポート内容
融資を受けたいと考えたとき、多くの方が「どこから手をつけてよいかわからない」と感じるのではないでしょうか。行政書士は、そうした中小企業や個人事業主の皆さまの伴走者として、書類作成から金融機関とのやり取りまで幅広くサポートいたします。
具体的には、決算内容の精査、事業計画書や資金繰り表、損益計画書の作成支援をはじめ、日本政策金融公庫との面談に向けた準備、そして必要に応じたアドバイスや書類の精査まで、融資審査を通過するための実務的支援を行います。
また、日本政策金融公庫との信頼関係を築くための事前協議の段階でも、行政書士の立場から適切な情報提供が可能です。
経営者の「想い」を、金融機関に伝わる「数字」と「根拠」に落とし込む役割を担うのが、私たち行政書士の強みです。
ご相談・お問い合わせ先の案内
我孫子市で事業を営む皆さま、また近隣地域で融資や創業に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
初回のご相談では、現在の経営状況やご希望を丁寧にヒアリングし、最適なサポート内容をご提案いたします。
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