起業を考える方の多くが、「法人と個人事業主、どちらで始めた方が創業融資に有利なのか」という疑問を抱きます。
会社を設立すべきか、それとも個人事業主として開業すべきかは大きな判断ポイントです。
しかし実際には、融資審査において法人か個人かという形式そのものが決定的な差になることはありません。本記事では、その理由と創業融資に通るための本質的なポイントを解説します。
結論:法人か個人かで差はない
日本政策金融公庫などの創業融資制度においては、「法人だから有利」「個人事業主だから不利」といった差は基本的にありません。
審査で評価されるのは、事業計画の内容、自己資金の割合、経営者の経験や熱意といった実質的な要素です。つまり、事業の実現可能性や継続性が確かであれば、法人でも個人事業主でも融資を受けられる可能性は十分にあります。
法人と個人事業主の違いは信用力ではなく手続き面
法人は登記を行うため、社会的信用が高いとされることは事実ですが、それが直接的に融資審査の合否を分けるわけではありません。
法人の場合は定款や登記事項証明書が必要になり、個人事業主の場合は開業届や確定申告書が必要になるなど、必要書類や手続きが異なるだけです。
重要なのは「どちらの形態でも事業計画書や資金繰り表をしっかり準備できるか」です。
よくある誤解
「法人にすれば必ず融資が通りやすい」というのは誤解です。
法人化すれば信用力が高まるというイメージがありますが、創業直後で実績のない会社は、個人事業主と実質的な評価に差はありません。
また「法人化すれば節税になるから有利」という声もよく聞きますが、創業期の利益が少ない段階では法人維持コストの方が負担になることも多く、安易な法人化はリスクになる場合もあります。
実務での注意点
創業融資で最も重要なのは、資金の使途を明確にすることと、自己資金をある程度確保していることです。例えば「必要資金500万円のうち、自己資金が150万円ある」というように、融資希望額に対して自己資金が2〜3割程度あると審査で評価されやすくなります。
また、過去の勤務経験や資格など、事業を実現するための根拠を計画書に反映させることが大切です。法人か個人かの違いより、これら実質的要素の準備不足が審査落ちの原因になりやすいため注意しましょう。
専門家によるサポートの活用
行政書士や中小企業診断士は、融資審査に通りやすい事業計画書の作成支援を行っています。
税理士は、法人と個人事業主の税務面での違いや、融資後の決算申告をサポートできます。特に初めての起業では、自分だけで計画をまとめると数字に説得力が欠ける場合があるため、専門家に相談して「融資担当者に伝わる計画」に仕上げることが成功のカギとなります。
まとめ
創業融資において、法人か個人事業主かという形式の違いで有利・不利が決まることはありません。
評価されるのは事業の実現性、自己資金、経営者の経験といった実質的な要素です。
法人化を検討するのは、事業の規模や将来像に応じて考えるべきであり、融資だけを理由にする必要はありません。
創業時の資金調達を確実に成功させたい方は、まず事業計画を丁寧に作成し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。