創業融資の面談を終えたあと、多くの創業者が感じるのが「いつになったら審査結果が出るのだろうか」という不安です。
開業準備や資金繰りを考えながら待つ中で、金融機関からの連絡がなかなか来ないと、「もしかして否決なのでは」「何か問題があったのでは」と心配になる方も少なくありません。
しかし、創業融資において審査が長引くこと自体は、決して珍しいことではありません。
創業融資は、確認事項が多く、事業計画や資金計画、自己資金などを慎重にチェックする必要があるため、一定の時間がかかるのが通常です。
また、金融機関側の事情によって審査期間が延びるケースも多く見られます。
私は行政書士として、これまで多くの創業融資に関する相談を受けてきましたが、「審査結果が遅い=否決」というわけではないケースを数多く見てきました。
本記事では、現場で実際によくある相談内容や実務経験をもとに、創業融資の審査結果が遅くなる主な理由について、解説していきます。
創業融資の審査結果が遅くなる主な理由とは
日本政策金融公庫の創業融資の審査期間は、一般的に申込みから結果が出るまで1か月程度が目安とされています。
ただし、これはあくまで平均的な期間であり、すべての案件がこの期間内に終わるわけではありません。
内容によっては1か月以上かかることもあり、「少し遅れている=異常」というわけではない点を理解しておくことが大切です。
また、審査結果が遅いからといって、「否決が濃厚」という意味ではありません。
むしろ、金融機関が慎重に内容を確認している途中であるケースや、内部で調整・検討が行われている段階であることも多く、時間がかかっている=前向きに検討されている可能性も十分にあります。
ここでは、創業融資の審査結果が遅くなる代表的な理由について解説します。
審査内容が難航しているケース
創業融資で多いのが、審査内容そのものに時間がかかっているケースです。
特に事業計画書は、売上予測や経費計画、事業の実現可能性など、多角的にチェックされるため、確認に時間を要します。数字に矛盾がないか、計画が現実的かどうかを丁寧に見ている段階では、簡単に結論を出すことができません。
また、事業計画以外にも自己資金や過去の経歴の整合性も重要なポイントです。その他にも個人信用情報、資金使途の妥当性、その人特有の状況などを総合的に確認するため、内部で慎重な検討が行われることがあります。
このような場合、金融機関内では追加資料の提出の検討や、上席者との協議が行われていることも多く、申込者から見ると「止まっている」ように感じても、実際には内部で審査が進んでいる状態であることも少なくありません。
事業計画書以外に審査されているポイントはこちら⇓
金融機関の支店内で案件が集中している時期
審査が遅れる理由として、金融機関側の繁忙期も大きく影響します。
特に年度末や年末年始などは、企業全体の資金需要が高まる時期です。そのため、支店内で多数の融資案件を同時に処理する必要があり、通常よりも審査に時間がかかりやすくなります。
担当者1人あたりが抱える案件数が増えると、どうしても先に申し込まれた案件から対応せざるを得ず、自分の審査が後ろに回ることもあります。これは申込内容に問題があるわけではなく、単純に処理能力の問題で遅れているケースです。
このような内部事情は申込者側からは見えにくいため、不安になりやすいポイントですが、一定期間待つことで自然に進むことも多くあります。
担当者のミスや後回しによる遅れ
あまり表には出ませんが、実務上意外と多いのが、担当者の確認漏れや対応の遅れによるケースです。
書類が揃っているにもかかわらず、確認が後回しになっていたり、差し戻しや追加確認が必要な点を伝え忘れていたりすることもあります。
連絡が長期間まったく来ない場合、「内部で検討中」というよりも、実際には手続きが止まっている可能性も否定できません。特に繁忙期と重なると、担当者のミスや優先順位の関係で後回しにされてしまうこともあります。
担当者ごとの対応スピードの違い
創業融資の審査スピードは、担当者によって差が出ることもあります。
経験豊富な担当者であれば、確認ポイントや上司への説明がスムーズで、比較的早く審査が進む傾向があります。一方で、新人担当者の場合、確認事項が多くなったり、上司のチェック回数が増えたりすることで、結果として時間がかかることがあります。
このように、創業融資の審査が遅くなる理由は申込内容だけでなく、金融機関側の事情や担当者の状況が大きく影響していることも多いのです。
創業融資の審査が遅いときにやってはいけない行動
創業融資の審査結果を待つ時間は、創業者にとって精神的な負担が大きいものです。
しかし、焦りから誤った行動を取ってしまうと、かえって審査に悪影響を与える可能性があります。ここでは、審査が遅いと感じたときに、特に注意すべき「やってはいけない行動」について解説します。
まず避けるべきなのが、何度も感情的に催促することです。
進捗が気になるあまり、頻繁に電話やメールで問い合わせをしたり、不安や不満を強くぶつけたりすると、担当者にマイナスの印象を与えてしまう恐れがあります。
金融機関は、申込者の事業内容だけでなく、人物面や対応姿勢も見ています。
冷静さを欠いた対応は、「資金管理や経営判断も感情的ではないか」と受け取られる可能性があり、審査上マイナスに働くことがあります。
次に注意したいのが、不用意な内容変更の申し出です。
審査中に「売上計画を変えたい」「借入金額を調整したい」といった申し出をすると、金融機関側は一度進めていた審査を止め、再度内容を確認し直す必要が生じます。
その結果、審査期間がさらに延びるだけでなく、「計画が固まっていない」「見通しが甘い」と評価されるリスクもあります。どうしても変更が必要な場合を除き、審査中の計画変更は慎重に判断すべきです。
創業融資の審査が遅いときこそ、落ち着いた対応が重要です。
焦って行動するよりも、状況を正しく理解し、適切なタイミングで冷静に対応することが、結果的に審査をスムーズに進めることにつながります。
創業融資は事業のスタートを左右する重要な手続きであるからこそ、慎重な行動を心がけましょう。
創業融資の審査が遅いときにできる現実的な対処法
創業融資の審査が予定より長引いている場合でも、ただ待つだけでなく、申込者側で取れる現実的な対処法があります。重要なのは、金融機関に悪印象を与えない形で、審査を前に進める行動を選ぶことです。
まず大切なのが、確認のタイミングと方法です。
審査期間の目安を大きく超えている場合や、事前に伝えられていた時期を過ぎても連絡がない場合には、状況確認を行っても問題ありません。
その際は、「結果を急かす」のではなく、「進捗に問題がないか」「追加で必要な資料がないか」を確認する姿勢が重要です。丁寧で簡潔な問い合わせは、担当者にとっても対応しやすく、結果として審査が動き出すきっかけになることがあります。
次に、追加資料を自主的に提出するかどうかの判断です。
やみくもに資料を追加すると、かえって確認事項が増えてしまう可能性もあるため注意が必要です。
担当者と連絡を取り、その上で担当者から要求された資料に絞って提出することが重要です。
また、行政書士など専門家を通すことも、有効な対処法の一つです。
専門家が間に入ることで、金融機関とのやり取りが整理され、担当者の負担が軽減されるケースがあります。専門家のサポートを受けながら申し込むことで、早めに回答がでることも少なくありません。
行政書士の視点で見る「審査が進みやすくなる対応」
行政書士の立場から見ると、金融機関が重視しているポイントは非常に明確です。
事業計画の実現可能性、自己資金の内容、開業業種の経験、そして申込者の説明に一貫性があるかどうかが重要視されます。これらが整理されていれば、審査は比較的スムーズに進みます。
また、担当者とのコミュニケーションも欠かせません。
質問に対して的確に答え、不要な情報を増やさないことが、結果的に審査のスピードを上げることにつながります。専門家が関与することで、回答内容や資料提出の方向性が整理され、金融機関側も判断しやすくなります。
さらに、提出する書類の再点検も重要です。
数字の整合性、記載内容の矛盾、説明不足の箇所を見直すことで、審査が滞る原因を事前に解消できます。創業融資の審査が遅くならないよう、事前に準備をすることが、結果的に融資成功への近道となります。
創業融資の審査が遅くても通過するケースは多い
創業融資の審査が想定より長引くと、「これは否決なのではないか」と不安になる方は少なくありません。しかし、実務の現場では、審査期間が長かったにもかかわらず、最終的に可決となるケースは数多く存在します。審査の長さだけで結果を判断するのは、必ずしも正しいとは言えません。
実際に、審査期間が長くても可決したケースの多くは、慎重な検討が行われていたり、前向きに検討していた案件です。
たとえば、ある整体院の創業融資では、運転資金を多めに申し込みました。
面談では担当者から「運転資金が多い」というように言われましたが、結果的に希望通りの金額で実行されました。
後日、担当者に話を伺ったところ、希望通りの金額を出せるように調整をしていたそうです。
このようなケースのように、「通す前提でどう判断するか」を内部で詰めていることは多く、結果として審査期間が長くなることがあります。
このような状況で最も重要なのが、焦らず冷静に対応する姿勢です。
審査が長引いているからといって、過度に催促したり、計画を頻繁に修正したりすると、かえって印象を悪くする可能性があります。
一方で、適切なタイミングで状況確認を行い、求められた資料を迅速かつ丁寧に提出することで、信頼関係を保ちながら審査を進めることができます。
創業融資の審査は、事業の将来性を見極める必要があるものです。
時間がかかっているからといって悲観的になる必要はなく、むしろ前向きに検討されている可能性も十分にあります。焦らず、正しい対応を積み重ねることが、最終的に融資を通過するための大切なポイントと言えるでしょう。
まとめ|創業融資の審査が遅い理由を正しく理解しよう
創業融資の審査結果がなかなか出ないと、不安や焦りを感じるのは自然なことです。
しかし、これまで見てきたように、創業融資の審査が遅れる理由は決して一つではありません。
案件の審査に時間がかかっている場合もあれば、金融機関内部の繁忙期や担当者の事情など、申込者側ではコントロールできない要因が重なっているケースも多くあります。
重要なのは、「審査が遅い=否決」と短絡的に考えないことです。
実務上、担当者が粘ってくれている案件ほど審査期間が長くなる傾向があります。審査の遅れ自体を過度にネガティブに捉える必要はないのです。
一方で、申込者側でコントロールできる部分があるのも事実です。
事前に書類の完成度を高めること、質問に対して的確に回答すること、適切なタイミングで状況確認を行うことなどは、審査をスムーズに進めるために有効な対応です。
逆に、感情的な催促や不用意な計画変更は、審査を長引かせる原因となる可能性があります。
創業融資に関する正しい知識を持つことで、「今どの段階なのか」「何をすべきか」が見えやすくなり、不安も軽減されます。審査期間中は、焦らず冷静に状況を見極めるとよいでしょう。
創業融資は、事業を安定してスタートさせるための大切な資金調達手段です。
審査が遅れている状況を正しく理解し、適切に対応することで、無用な不安に振り回されることなく、次のステップに備えることができます。冷静な判断と準備こそが、事業成功への第一歩と言えるでしょう。
創業融資は行政書士に相談するのがおすすめな理由
創業融資を検討する際、「自分で申請できそうだから専門家に相談しなくても大丈夫」と考える方も少なくありません。
しかし、実務の現場では、書類の不備や説明不足が原因で審査が長引いたり、結果的に不利な判断につながったりするケースを多く見かけます。
創業融資をスムーズに、そして成功させるためには、行政書士に相談することが大きなメリットになります。
まず重要なのが、書類作成と事前チェックの精度です。
創業融資では、事業計画書や資金計画書の内容が審査の中心となりますが、単に書類が揃っていれば良いわけではありません。
数字の整合性、事業内容の具体性、返済可能性の説明など、金融機関が重視するポイントを押さえていないと、確認事項が増え、審査が長期化する原因になります。
行政書士は、融資審査を意識した視点で書類を作成し、不足している点や誤解を招きやすい表現を事前にブラッシュアップすることができます。
創業融資は、事業のスタートを左右する重要な手続きです。不安を抱えたまま進めるのではなく、専門家に相談しながら準備を進めることで、審査遅延や否決のリスクを減らし、安心して開業に集中することができます。
さらに、融資に強い行政書士であれば、これまでの融資事例や、金融機関の審査傾向も熟知しているため、より的確なサポートが可能です。
当事務所では、創業を目指す方に創業融資支援を行っており、これまでにも軽貨物、学習塾、撮影スタジオなど、さまざまな業種の創業融資をサポートしてきました。
書類の完成度を高めることはもちろん、「どう見せれば審査官に伝わるか」という部分まで一緒に考え、結果につながる支援を徹底しています。
「自分の準備がこれで合っているのか不安」「一発で通過したいけど、書類作成に自信がない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。初回の相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせいただければと思います。
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