創業融資の返済期間を何年に設定するのか。
長く借りるべきか、それとも早く返すべきなのか。
今回は7年返済と5年返済を比較し、シュミレーションしてみました。
返済の設定の仕方次第では、1年目の返済負担に大きな差が生じます。
お役に立つ内容であれば幸いです。
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の概要
創業融資を受ける方法として多く利用される日本政策金融公庫。
その中でも有名な創業融資制度として「新創業融資制度」という制度があります。
まずは、この融資制度の概要から解説していきます。
新創業融資制度の概要
新創業融資制度
【利用できる方】
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方が利用可能です。
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できることが条件となっています。
〈解説〉
創業資金総額の10分の1以上とはどういうことか、
一例として、創業資金総額700万円の例をあげてみます。
創業するときの必要資金として
店舗の内装工事費 200万円
機械・設備 200万円
仕入れ代 100万円
その他諸経費 200万円
合計 700万円
という資金計画を立てたとします。
この場合、700万円の10分の1である70万円以上を自己資金として持っていないと、融資対象になりません。
【資金の使い道】
新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
〈解説〉
あくまでも事業用に使うお金が対象です。
借りたお金で家を購入したり、株式を購入したりはできません。
また、事業目的でも機械など設備の購入資金として借りたお金を、仕入れや人件費の支払いのような運転資金に使うこともできません。
このように、融資を申し込んだ時の資金の使い道と全く違うお金の使い方を「資金使途違反」と言います。
この資金使途違反がばれてしまうと、重大な違反となり、今後はその金融機関と取引ができなくなります。
場合によっては、一括返済を求められることもあります。
気を付けましょう。
【融資限度額】
3000万円(うち運転資金1500万円)
〈解説〉
融資限度額が3000万円となっていますが、だれでも3000万円借りられるわけではありません。
3000万円いけるのはお医者さんくらいだそうです。
どのくらい借りられるのかは、自己資金の金額やその人の経歴、ビジネスモデルなどを総合的に判断して決定されます。
一般的には数百万円で落ち着くことが多いです。
【返済期間】
各種融資制度で定めるご返済期間以内
〈解説〉
他の融資制度では設備資金20年以内、運転資金7年以内(女性、若者/シニア起業家支援資金制度)というように明確な数字がでていますが、新創業融資制度はあいまいな表現になっています。
他の融資制度と同じで7年返済で申し込むことが多いです。
【利率】
(令和2年8月3日現在)
基準金利2.46%~2.85%
〈解説〉
基準金利の他に特別利率A,B,C,D,E,J,P,Qが用意されています。
こちらで金利を指定する余地はほとんどありません。
また、利率は定期的に変更されます。
融資された時の利率が完済まで固定されます。
【担保・保証人】
原則的に不要です。
〈解説〉
一昔前は担保や連帯保証人は当たり前のように要求されていました。
しかし、現在は担保や連帯保証人を要求することはほとんどありません。
以上、「新創業融資制度」の概要について解説してきました。
ここからは、返済期間について具体的な例も使いながら解説していきます。
返済期間を変えてシュミレーション
ここからは、返済期間が違うとどのような違いがあるのか。
前掲した新創業融資制度を5年返済と7年返済で借りた際の違いをシュミレーションしてみます。
なお融資額はどちらも700万円で計算します。
5年返済で借りた場合
まずは5年で返済するケースの例です。
以下がその条件となります。
・融資金額:700万円
・返済期間:5年
・据置期間:なし
・利息:2.8%(高めに試算)
という条件で創業融資を受けたとすると、どのようになるのでしょうか。
・毎月の元金返済:700万円÷60ヵ月=約11万7千円
・毎月の利息:約16333円(元金の返済が進むと少なくなっていきます)
・元金と利息を合わせたひと月あたりの金額:約13万3千円
というように13万円強のお金がひと月で出ていきます。
7年返済で借りた場合
次に7年で返済するケースでシュミレーションしてみます。
一般的に多い7年で計算しました。
以下がその条件となります。(黄色が付いている箇所が5年返済と異なるところです)
・融資金額:700万円
・返済期間:7年
・据置期間:6ヵ月
・利息:2.8%
という条件で借りるとどうなるでしょうか。
・毎月の元金返済:700万円÷78ヵ月(据置期間6ヵ月は元金返済不要)=約8万9千円
・毎月の利息:約16333円(元金の返済が進むと少なくなります)
・元金と利息を合わせたひと月あたりの金額:約10万5千円
・据置期間中の支払額(利息のみ):約16333円
というように10万円強のお金がひと月で出ていきます。
以上のように計算結果がでました。
次項では両者の違いを項目別に見ていきたいと思います。
5年返済と7年返済で比較
前項では5年返済と7年返済で計算してみました。
ここでそれぞれを比較してみたいと思います。
ひと月の元本返済金額
5年で返済する場合:約11万7千円
7年で返済する場合:約8万9千円
7年返済の方が約2万8千円ひと月の負担が軽くなっています。
毎月の利息
5年で返済する場合:約16000円
7年で返済する場合:約16000円
両方とも700万円を2.8%で借りているので返済当初はあまり差がありません。
ただし、5年で返済する場合は7年返済よりも元金の減少が早いので、利息の金額の減り方も早くなります。
逆に7年返済の場合、元金の減り方が遅く7年間残債があるので、5年返済よりも利息の総額は多くなります。
※この記事では利息金額については一定と仮定して試算しています。
元金と利息を合わせたひと月あたりの金額
5年で返済する場合:約13万3千円
7年で返済する場合:約10万5千円
元金と利息を合わせると、ひと月の支払いは7年返済の方が約2万8千円ほど軽くなります。
据置期間
5年で返済する場合:なし
7年で返済する場合:6ヶ月
5年で返済する場合は据置期間なしなので、借入れ初月から返済が始まります。
5年×12ヵ月で60回払いです。
※今回のシュミレーションでは据置期間を設けませんでしたが、5年の返済でも据置期間を設定することは可能です。
7年で返済する場合は据置期間を6ヶ月で設定しました。
借入れから6ヶ月間は利息のみ支払います。その期間が経過したら元金返済が開始します。
7年×12ヵ月-6ヶ月で元金は78回払いとなります。
※もちろん7年返済でも据置期間を設定しないことができます。その場合は7年×12=84回で元金を返済します。
長期返済による負担軽減効果
創業期においてはなるべく長期で、据置期間も設定して借りるというのが、個人的にはおすすめです。
今回のシュミレーションでいうと7年返済で据置期間を設定するパターンです。
なぜかというと、開業時は売上げが十分にないことが多いからです。
売上げが少ない時期に返済負担も大きいと、返済自体が経営を苦しくする一因にもなりかねません。
借り方でこんなに違う
同じ700万円を借りる場合でも、借り方次第で大きな差が生まれます。
5年返済と7年返済で比べると、創業融資を受けてから最初の1年間の支払額(利息含む)は以下になります。
【5年返済】
13万3千円×12ヵ月=159万6千円
【7年返済(据置期間6ヶ月)】
10万5千円×6ヶ月+16000×6ヶ月=63万円+9万6千円=72万6千円
(元利含む期間)(利息のみの期間)
というように、単純に5年返済するのと、7年返済(6ヶ月据え置き期間)にするのでは、開業1年目の返済負担が87万円も軽くなります。
据置期間と長期の返済でひと月あたりの出金額を抑える。
その間に単純に5年だと返済にあてるはずだった87万円を、有効に使い売上げを作り、固定客を増やして事業を軌道に乗せたいところです。
前掲の例にあったように、5年返済の場合のひと月の出金額は約13万3千円。
対して、7年返済の場合はひと月約10万5千円。
この2万8千円の差はかなり大きなものです。
また、年間の87万円の支出を抑えられるのは不安定な創業期にはありがたいです。
このように、融資を受けてからの「資金繰り」という観点で、なるべく長期の返済を個人的におすすめしています。
ちなみに2年目以降は7年返済だと5年返済よりも
2万8千円×12ヵ月で33万6千円ほど返済負担を抑えられます。
できるだけひと月の返済負担を減らして、お金を広告費などの「お客様作り」に使っていきたいですね。
まとめ
日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用する場合、
返済期間によって、どのような違いがあるのかシュミレーションをして解説しました。
まとめると
・5年返済は7年返済よりひと月の返済負担額が大きい。
・長期返済と据置期間を使い、ひと月の返済負担を減らす。
・据置期間も使って創業当初の返済負担を軽くする。
・借り方次第で、創業1年目の返済負担はかなり軽くなる。(今回のシュミレーションでは約87万円軽減)
・創業融資は長期返済がおすすめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
少しでもお役に立つ内容であれば幸いです。
創業融資のご相談も随時受付中です。