創業融資の審査では個人の通帳が必要になります。
通帳の内容次第で融資の可否が決まることもよくあります。
その重要な通帳で何を審査しているのか、基本的なところを解説します。
少しでもお役に立つ内容であれば幸いです。
通帳で自己資金を確認している
本題に入る前に大前提があります。
なにかというと、自己資金は基本的に「客観的に証明できる」必要があります。
なので、タンス預金のように通帳に記載されないお金は自己資金として評価されません。
後述する蓄積過程や支払い状況もそうです。
すべて通帳の履歴で証明する必要があります。
それでは本題に入っていきましょう。
まず、通帳の内容を見ることで、以下のようなことを確認しています。
・自己資金の金額はどのくらいあるのか。
・現在ある自己資金の蓄積過程はどうなっているのか。
・定期的な支払いで遅れたりしていないか。
・大きな金額の入出金があった場合、それは何なのか。
というようなことを確認しています。
自己資金からはさまざまな事がわかります。
たとえば、「いくら融資できるのか」「開業に向けてどのくらい準備をしてきたのか」「お金の管理をしっかりできる人なのか」「不審なお金の流れはないか」などさまざまなことを判断しています。
なので、事業計画や経歴がどんなに素晴らしくても、自己資金の内容が悪ければ、これが原因でゼロ回答になることがあります。
そのくらい自己資金は創業融資において重要なポイントとなっています。
言い換えれば、通帳がないことには創業融資の審査そのものができない、ということになります。
それでは次項から詳しく解説していきます。
自己資金の金額を審査している
まず、自己資金の金額を確認しています。
どのくらいの資金を持っているか、です。
この金額によって、融資できる金額も変わってきます。
それでは解説していきましょう。
自己資金がどのくらいあるのか?理想は3分の1
自己資金は、「総事業資金」の3分の1以上の金額が銀行口座にあると理想的です。
総事業資金とは、開業時にかかる設備資金と運転資金を合計した金額です。
たとえば、
設備資金 400万円
運転資金 200万円
だとすると、合計600万円が総事業資金となります。
この600万円の3分の1である200万円を自己資金で持っていて、残りの400万円を融資で調達する。
このように3分の1を自己資金で。残りの3分の2を融資でまかなう。
ということができると理想的です。
ただ、必ずしも3分の1の自己資金を持たなければならないかといえば、そうではありません。
4分の1や5分の1でも融資はされます。
少ない自己資金で融資を申し込む際は、開業する業種の経験など他の要素でプラス評価を得る必要があります。
また、保証協会ではなく日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は自己資金が10分の1あれば申し込めます。
ですが、10分の1はあくまで「申し込める条件」です。
仮に10分の1の自己資金しか用意できなければハードルは高くなります。
「審査の土俵にあがる」のと「審査で勝負できるか」は別ものということです。
自己資金は多いほど有利になる
自己資金は「総事業資金の3分の1が理想」と書きましたが、
それ以上に持っていれば、さらに有利になります。
たとえば、総事業資金の2分の1あれば融資の確率はさらに上がります。
前掲の例でいえば、600万円の2分の1の300万ですね。
自己資金が多いと、大きい金額の融資も可能
自己資金の金額が大きければ、融資を受けられる金額も大きくなります。
たとえば、自己資金が100万円で800万円の融資を受けようとすると、ハードルは高いです。
ですが、自己資金が500万円あれば800万円の融資も可能になります。
このように、自己資金があればあるほど、融資の確率、融資金額ともにプラスの効果があります。
逆にいえば、自己資金が少ないと、確率、融資金額の両方とも厳しくなるということです。
自己資金=資本金ではない
株式会社や合同会社を設立して開業する方もいらっしゃると思います。
この時のよくある勘違いとして、法人設立時の資本金を自己資金と考えてしまう事です。
創業融資の際の自己資金=資本金の金額ではありません。
自己資金というのは、あくまでも「通帳にある事業用に使用する予定のお金」です。
たとえば、資本金100万円(資本金は使っていないものと仮定します)と、
資本金の他に事業用に使う予定の手持ち資金が200万円の合計300万円あったとします。
この場合の自己資金は、資本金100万円+資本金以外の現金200万円の合計300万円になります。
またこんな事例もありました。
通帳には1000万円ほどあります。
そのうち生活費として300万円(開業後半年分)を別に取っておくことにしました。
このような場合、事業に使う資金は1000万円-300万円(生活費)=700万円
という計算で700万円が自己資金になります。
生活費の300万円は事業用ではないので自己資金ではありません。
自己資金の金額について解説してきました。
しかし、自己資金は単純に沢山あれば良いというものではありません。
その蓄積過程も評価の対象となります。
次項では蓄積過程について見ていきましょう。
自己資金の蓄積過程がどうなっているのか確認
自己資金の蓄積過程を審査しているとはどういうことでしょうか。
この蓄積過程にも審査のポイントがあります。
代表的な例を解説していきます。
給料をコツコツ貯めると理想的
たとえば、審査時の通帳残高が毎月の給料を貯めたものであれば理想的です。
なぜかというと、少しづつ貯蓄してきたということは、開業に向けて計画的に準備してきた。
と評価できるからです。
とくに、創業融資はこの「準備」が評価されます。
少しづつ貯めてきて、長い時間をかけて準備してきたことがわかれば、多少自己資金が少なめでも希望通りの金額を融資することがあります。
自己資金は通帳で管理を
給料を貯める場合の注意点があります。
それは通帳で管理する必要があるということです。
どういうことかというと、今でも給料を手渡しで渡している会社があります。
この場合、自分の通帳に給料が振り込まれません。
通帳で証明できないということは、自己資金として認めてもらえません。
タンス預金としてみなされてしまいます。
なので、手渡しで給料が支給される場合は、毎月必ず通帳に入れる必要があります。
明細も保管しておきましょう。このようにして、証拠を作っておく必要があります。
支援金のみは評価が下がる
前掲のように、自分で貯めた金額ではなく、「通帳にある現金は全額、親族からの支援金です」という場合、自分で貯めた自己資金よりも評価は低くなります。
なぜなら、自己資金の重要な意味である「開業に向けた準備」が評価できないからです。
例を挙げると
自分で貯めたお金 0円
親からもらったお金 200万円
このような蓄積過程の自己資金200万円は、自分で貯めた200万円と比べると評価はかなり下がります。
逆に、次のような支援金であれば問題ありません。
自分で貯めたお金がそれなりにあって、少し不足するので支援金をもらうケース。
たとえば、自分で貯めたお金150万円と父親から50万円もらい、合計200万円を自己資金とするようなケースです。
これであれば、自分で努力したうえに親族の応援もあるといえるでしょう。
見せ金はNG
自己資金を増やそうとして一時的にどこかから借りてくることも考えられます。
ですが、基本的にこのような「見せ金」はバレてしまいます。
甘くみてはいけません。
ひとつウソがばれると他のところまで疑われますのでやめましょう。
蓄積過程=お金の出どころ
以上のように、通帳のお金はどこから来たお金なのか、というところまで審査しています。
このお金の出所で自己資金に対する評価がプラスにもマイナスにもなります。
単純に自己資金の金額だけを審査対象としているのではないことを覚えておきましょう。
また、蓄積過程はお金が貯まっていく過程のみを見ているのではありません。
支払いの状況も審査の対象となります。
次の項目ではこの支払いについて解説していきます。
日々の支払い状況を確認している
自己資金といえば蓄積状況に目が行きがちですが、日々の日常的な支払いもポイントとなっています。
意外な盲点ですので注意しておきましょう。
毎月の支払いは遅れない
支払い状況の何を確認しているかというと、「支払うべきものを期日どおりにしっかり支払っているか」です。
たとえば、毎月の電気代やガス代、携帯代、家賃などがこれにあたります。
要するに、毎月決まった期日に支払うものです。
期日どおりに支払っていれば、なにも問題ありません。
逆に支払いが頻繁に遅れていたり、滞っていたりすると、「お金にだらしない人」という評価をされてしまいます。
本当に返済してもらえるのか、怖くてお金を貸すことができないそうです。
支払いにも気をつけましょう。
税金は納める
税金の滞納も要注意です。
納める義務があるのに納めていない場合、基本的に融資はできません。
一発アウトです。
これも「支払うべきものを支払っているのか」ということです。
また、融資には納税証明書を提出する必要があります。
この証明ができなければ、そもそも審査に入れません。
そのほかに、信用保証協会は税金をはじめとした公的資金で運営されています。
これも納税が条件になっている理由のひとつです。
ただ、合法的に免税になっていて納める必要がない場合は利用できることがあります。
不審な入出金がないか確認
大きな金額のお金が一度に入金、出金していた場合も要注意です。
大きなお金の移動が通帳でわかった場合、担当者から質問されたりします。
それがしっかりと説明でき、証拠が示せるものであれば問題ありません。
逆に、審査上好ましくないものであれば厳しくなります。
一例を挙げると
・見せ金として誰かから一時的に借りたので多額の入金がある。
・金融機関ではなく、友人など個人信用情報にでない所から借金をしていてその返済がある。
上記のようなケースはマイナス評価です。
まとめ
以上、創業融資で通帳を確認する理由について解説しました。
通帳がないとそもそも審査ができないのです。
まとめると
・自己資金は通帳で証明できるか。
タンス預金などお金の出所が証明できないものは自己資金と評価できません。
・自己資金の金額を確認している。
金額が多いほど確率、融資金額ともに有利になります。
・自己資金の蓄積過程を確認している。
蓄積過程次第でプラスにもマイナスにもなってしまいます。
・支払い状況を確認している。
定期的な支払いができてればOK。遅れたりするとマイナス評価に。
税金の滞納は一発アウト。
・不審な入出金を確認している。
担当者に堂々と説明できないものは要注意。
以上のように自己資金の審査を通帳という証拠を用いて行っています。
ちなみにですが、本文中に「自己資金は給料が理想的」と書きましたが、自己資金の出どころによっては給料ではなくても認められることがあります。
自分の自己資金はどうなのか不安な方は、専門家に聞いてみるのも一案です。
少しでもお役に立つ内容であれば幸いです。