信用保証協会を利用して創業融資を受けるという方法があります。
この保証協会、どのような流れで進んでいくのでしょうか。
今回は、スムーズに進めるために、申し込む前の準備段階からの流れをまとめました。
少しでもお役に立つ内容であれば幸いです。
店舗を借りるなら物件を決める
創業融資を申し込む前にやるべきことがたくさんあります。
まずは、申込みをする前の準備からお伝えしていきます。
前提として、必要な金額が決まっていなければ融資を申し込むことができません。
店舗を賃貸して開業するなら、具体的な物件を決定して金額を確定する必要があります。
決まれば店舗に対していくら必要なのかわかります。
店舗の初期投資額を決める
開業する場所を決めて、初期費用がいくら必要なのか把握しなければなりません。
店舗に対する最初の費用は高額になることが多いです。
敷金、礼金、保証金、内外装工事費など、これらの費用を合計すると数百万円を簡単に超えてしまいます。
物件によって金額が異なるため、具体的に決めて必要な金額を確定させる必要があります。
店舗にかかる費用の見積もりをとる
融資を申し込むにあたり、高額な設備資金を借りるには見積書が必要になります。
ここでは見積書を取る費用の例を挙げてみます。
敷金や礼金、保証金など物件契約時にかかる費用
まず、敷金や礼金など契約する際に支払う金額が物件ごとに違います。
物件によっては家賃の半年分などを支払うところもあります。
これだけで数十万円かかることも普通です。
融資を申し込む際は不動産屋などから交付された見積書を用意しておきましょう。
内外装費
店舗を開く際に内外装の工事も必要になります。
とくに居抜き物件とスケルトンでは費用も全然違います。
スケルトンの場合、前の店舗からあるものが使えずにゼロから作り上げるため、工事費用がかなり高額になります。
また、契約する店舗によっても内外装費が変わります。
それにより、工事業者からの工事費の見積もり金額も変わるので決定しなければなりません。
銀行には工事費の見積書を提出します。
内外装費も設備資金として融資を受けられるので、業者からの見積書がその疎明資料として必要になります。
候補物件が決まったら工事業者から見積書をもらっておきましょう。
賃料
当然ですが、店舗によって賃料が変わります。
多くの場合、駅の近くやメイン通り沿いなど立地が良い場所は家賃も高くなります。
逆に駅から少し離れていたり、メインストリートから奥まった物件などは安くなります。
このような毎月かかるランニングコストも把握しておきましょう。
家賃は運転資金として借りることができます。
以上のように、契約する店舗によって、費用面だけでもさまざまな要素が変わってきます。
なので、各業者から見積書をもらって金額を確定しておくと融資の申込みがスムーズに行えます。
物件契約は必ず必要ということではない
具体的な場所を決めなければなりませんが、必ずしも本契約をする必要はありません。
大家さんや不動産屋と交渉する
必ず賃貸契約をしなければならないと、融資の審査に落ちた場合、契約時に支払った費用が無駄になってしまいます。
このような事態は避けたいところです。
そこで、大家さんや不動産屋と交渉をします。
たとえば、「融資が決定したら必ず契約をするので、決まるまで待ってください」というような感じです。
そうすると待ってくれるケースがあります。
私がお手伝いさせていただいているお客様では、このような事例がよくあります。
人気物件は契約が必要
ただし、自分よりも有利な条件を提示した人が現れたりすると、自分ではなくその人に決まってしまうことがあります。
また、好立地の人気物件などは、そもそも待ってもらうことができなかったりもします。
待ってもらえたとしても、すぐに他の買い手がついてしまいます。
このようなケースでは契約や仮契約が必要になるかもしれません。
物件が流れると再審査
融資の審査中に契約予定の物件が他人に契約されてしまい、別の物件を探さなければならなくなることがあります。
このような場合は原則的に再審査になってしまいます。
融資が決まるまで待ってもらうリスクはこのようなところにあります。
しかし、契約をすれば他人には流れませんが、否決されたときのリスクがあります。
本契約を待ってもらうのも、契約するのも一長一短あるので注意しましょう。
事業計画書を作っておく
金融機関に相談する前に事業計画書を完成させておくのがおすすめです。
事業計画書と見積書などといった資料を持って行くことで、最初の相談時から具体的な話を銀行員とすることができます。
では、どのような事業計画書を持って行くとよいのでしょうか。
事業計画書は分かりやすいものを
計画書はわかりやすく記載されていると良いです。
内容が分かりにくい事業計画書を作成しても、審査する側に伝わりません。
また、事業計画というと、数十ページや数百ページの書類というイメージをされる方もいらっしゃると思いますが、実際にはすべて読むことができません。
なので、ポイントをしぼって10~20ページ位にまとめて、審査しやすくしていきましょう。
そのために、最低限必要なものについて解説していきます。
信用保証協会のフォーマット
信用保証協会のフォーマットの各項目を埋めていきます。
このフォーマットは信用保証協会のホームページからダウンロードできます。
ダウンロードした後、各項目を記載して提出します。
(千葉県保証協会のホームページでは若干わかりにくいところにあるので注意)
事業内容を文章にして別紙にまとめる
フォーマットを埋めて提出すると書きました。
ですが、フォーマットの記入欄だけでは狭くて記載しきれません。
そこで、フォーマットで表現しきれないところは、別紙に書いて提出します。
たとえば、どのようなことを書いていくかというと、
・創業動機
・経営者の略歴、
・セールスポイント、
・販売ターゲット・販売戦略、
・競合、市場など企業を取り巻く状況、
・取引先、取引関係
・その他
以上をWordなどで詳しく書き提出します。
売上げ計画
開業してからどのくらいの売上げを見込んでいるのかをExcelで作ります。
なるべく根拠のあるものをひと月単位で3年分(36ヶ月)計画を立てるとよいでしょう。
また、売上げの計画を立てるときは控えめに見積ることが大事です。
損益計画書
売上げの計画が完成したら、売上げに対する原価はどのくらいか。
固定費は何が必要でいくらくらいかかるのか。
最終的に利益がいくら残るのか。
これらがわかる計画書をひと月単位で3年分(36ヶ月)計画を立てます。
創業融資のような長期融資の「返済原資」は経常利益+減価償却費で簡易的に計算できます。
経常利益+減価償却費が年間返済額を上回っていなければなりません。
上回れば返済できることになり、足りなければ返済できないことを表しています。
当然返済できる計画書を作る必要があります。
資金繰り表
資金繰り表も作成できるのであれば、作成したい資料です。
資金繰り表とは簡単に言うと「現金の出入りのみ」を計算する表です。
なので、減価償却など実際に現金が出ていってないものはカウントしません。
「いつ現金が入ってきて、いつ出ていくのか」だけを表します。
これも12ヵ月分の表を作って提出したいところです。
とくにこの資金繰り表があると、会社の資金の流れがわかりやすくなります。
返済ができることを示せる書類となりますのでおすすめです。
見積書の金額も記載する
事業計画書の作成と同時に、車両や機械、什器など、設備を購入する際の見積書ももらっておくと良いでしょう。
この見積書の金額も事業計画書に反映させます。
特に、損益計画書や資金繰り表といった数字の計画から漏れないようにしましょう。
金融機関に行くときは具体的な話をできるように
ここまでの準備が整ったら金融機関に行きます。
信用保証協会ではありません。
東京都などは直接信用保証協会に申し込むことができますが、千葉県信用保証協会は現在、直接の申込みを受け付けていません。
したがって、銀行や信金といった金融機関が信用保証付き融資の窓口となります。
資料を持って金融機関に相談する
金融機関に行く際は準備した資料を持って行きましょう。
相談に必要な資料
相談時に最低限必要な資料は以下の通りです。
事業計画書一式
作成した事業計画書をすべて持って行きます。
事業計画を持って行くことで金融機関の担当者と具体的な話ができます。
事業計画書がないと詳しい話ができないので忘れずに持参しましょう。
預金通帳
個人の預金通帳をすべて持って行きます。
預金通帳は創業融資のポイントである自己資金の審査に使います。
相談した際に通帳の内容を確認して問題なさそうであれば、コピーを取るなど手続きが進みます。
見積書
店舗契約や内外装工事、機械、設備の購入が必要であれば、
各業者から取り寄せた見積書も持参しましょう。
以上の資料を持って行くことで、具体的な話ができます。
メガバンクは避ける
金融機関といっても、どこでもいいわけではありません。
おすすめできるところと、できないところがあります。
創業時の融資でおすすめできない銀行はメガバンクです。
なぜかというと、メガバンクの傾向として金額の大きい案件を好む傾向があるからです。
開業資金のように数百万円単位の金額は、メガバンクにとって少額の部類に入るので敬遠されることが多いです。
すべてとは言いませんが、門前払いされることもあります。
また、開業した後のお付き合いも地域の金融機関と比べるとやりにくいので、特別な理由がない限りメガバンクを使うメリットはありません。
メガバンクは自社が成長してからお付き合いすると良いでしょう。
おすすめは信用金庫や信用組合
創業時の融資では信用金庫や信用組合がおすすめです。
理由としてはいくつかあります。
まず、数百万円単位の創業融資でも熱心に対応してくれることが多いです。
融資実行後も担当者との距離が他の金融機関よりも近く、コミュニケーションが取りやすいのも特徴です。
そのため、日頃から自社の情報を担当者と共有しておくと、その後の支援も受けやすくなります。
このように、開業時の融資だけでなく、開業した後の支援という点でもおすすめです。
正式に申込み
担当者と事業内容や個人の資産状況を話し、融資ができそうだと判断されれば正式に融資を申し込みます。
申込み後、本格的な審査に入っていきます。
保証協会の流れ
金融機関に融資を申し込んだ後のおおまかな流れは以下の通りです。
金融機関の支店内稟議
融資を申し込んだ金融機関の支店内で稟議にかけられます。
金融機関から保証協会に案件が上げられる
申し込んだ銀行に前向きに検討されれば、信用保証協会に案件が持ち込まれます。
逆に銀行側が厳しいと判断すれば保証協会に上げられません。
保証協会の職員と面談
保証協会に案件が上がると、次は信用保証協会の職員と面談があります。
事業計画書の内容、自己資金、経歴などさまざまなことを質問されます。
余談ですが、創業融資の場合は原則的に保証協会と面談があります。しかし、2回目以降の融資は面談がないことが多く、金融機関の担当者を通してやり取りをします。
また、ごくまれにですが創業融資でも保証協会との面談をせずに融資が決まることがあります。
保証の諾否が決定する
面談後、数週間すると信用保証協会が保証の諾否を決定します。
契約を結ぶ
保証協会がOKをだすと金融機関は正式に融資の実行を決定します。銀行とは金銭消費貸借契約を結びます。
逆に、保証協会がNGをだすと基本的に融資は実行されません。
融資金が入金される
融資を申し込んだ金融機関の支店に自分の口座を作ります。
その口座に信用保証料を差し引いた額の融資金が入金されます。
書類集めに注意
審査の際にさまざまな公的な書類を提出するように言われます。
申し込んだ金融機関によって違うかもしれませんが、市役所や税務署で普段聞きなれない書類を取り寄せることが多いです。
日本政策金融公庫では要求されない細かい書類もあるので注意しましょう。
さいごに
信用保証協会で創業融資を受けるための準備段階からの流れは以下の通りです。
・店舗を借りるなら物件を決める
・店舗の契約料、内装工事費、設備や機械の見積書を取り寄せる
・事業計画書を作成する
・金融機関を選ぶ(おすすめは信金や信組)
・事業計画書や通帳、見積書などの資料を持って相談に行く
・融資を申し込む
・支店内稟議にかけられる
・信用保証協会に案件が上げられる
・信用保証協会の職員と面談をする
・保証協会が諾否を決定する
・保証協会がOKをだすと融資が決定する
・金融機関と契約を結ぶ
・金融機関に自分の口座を作る
・口座に入金される。
千葉県では現在、金融機関を経由して信用保証付きの融資を申し込むことになっています。
銀行などに行く前に準備をしていくことで、融資の可否やスピードにも影響がでます。
弊所では融資の決定、入金まで全工程をサポートしております。お気軽にご相談ください。