開業資金の融資を日本公庫などに申し込みます。
そのとき残念ながら融資を断られることもあります。
断られた場合、事業計画書を書き直して再申請すれば通るのでしょうか?
実際はどうなのか書いてみました。
この記事では以下の内容に触れています。
・融資が断られた理由はなんなのか?
・本当の否決理由を教えてくれないことがある
・創業融資に必要な事業計画書とは?
・他の金融機関に申し込む
・融資の否決理由が大事
融資が断られた理由はなんなのか?
一度、開業資金の融資を断られたらどうすれば良いのでしょう。
事業計画書を書き直して再度申し込めば通るのでしょうか?
実は、事業計画書を書き直して通るケースと、通らないケースがあります。
なぜこのように違いが生じるかというと、
融資を断られた理由が関係しているからです。
事業計画書を書き直して通る可能性があるケース
融資の否決理由が事業計画書の「精度の低さ」にあった場合は、
精度の高い事業計画書を作成し再度申請すれば、通る可能性があります。
例を挙げると、自己資金や過去の経歴などに不利な点はないが、事業計画の内容に問題があるケースがそれにあたります。
たとえば、
「売上げ計画の数値が良すぎて絵に描いた餅に見える」
「損益計画を立てたものの、利益が低い」
「返済できる計画になっていない」
「記載された内容が少なく、事業内容がわからない」
といった事業計画で否決されてしまったら、これを改善していきます。
上記の例をふまえて作り直すと、
「売上げの予測を根拠立てて、厳しく見積もる」
「損益計画の利益は返済できる金額を確保する」
「資金繰り表を作成して問題なく返済できることを示す」
「審査担当者が書面のみでも理解できるように詳しく書く」
というように計画書を作り直せば通る可能性がでてきます。
ただし、1回否決されていると履歴と否決理由が残っているので、当然審査は厳しくみられます。
事業計画書を書き直しても通らないケース
「事業計画書の内容以外」で否決されることがあります。
事業計画以外の理由で否決されてしまったら、どんなに事業計画書の内容をブラッシュアップしても通る可能性は低いです。
たとえば融資を申し込んだものの、申込者の「自己資金がない」が理由で断られた。
というようなケースです。
この場合、「自己資金のなさ」という否決理由が解消されない限り、再申し込みをしてもおそらく断られます。
どんなに事業計画書をブラッシュアップしても難しいです。
つまり、「融資を断られたから事業計画書を書き直せば良い」というのではなく、
融資が断られた「本当の理由を解決できるかどうか」が、再申し込みを通すときのポイントになります。
事業計画書を書き直して再申請すれば良いと言えるのは、一度目の融資申請が事業計画書を理由に謝絶された場合なのです。
本当の否決理由を教えてくれないことがある
断られる理由について書きましたが、こんなこともあるのでご注意ください。
融資を断られるときに、担当者は否決の理由を伝えてくれます。
伝えてくれるのですが、核心となった理由までは伝えてくれないことがあります。
たとえば、こんなご相談がありました。
会計事務所経由で公庫に創業融資を申し込んだものの断られてしまった。
理由としては事業計画の売上予測が良すぎる。全事業資金に対して自己資金の比率が低い。
というものでした。
ご本人からお話を伺ったところ、たしかに売上予測が高すぎたり自己資金の比率が低いというところはありました。
しかし、おそらく本当の核心となった否決理由は「個人信用情報のキズ」にあるという結論に至りました。
これについては審査担当者から伝えられていませんでした。
個人信用情報が断る理由となった場合、過去の滞納した情報が消えるまで公庫からの融資はほぼ不可能です。
そのため、この件では公庫に再申請をしませんでした。
創業融資に必要な事業計画書とは?
さて、事業計画書を書き直すとして、どのようなことを書いていく必要があるのでしょう。
当事務所で作成している必須書類を例にあげてみます。
<事業内容を文章で記載したもの>
日本政策金融公庫に融資を申し込む場合、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」のフォーマットがあります。
そのフォーマットの各項目を別紙に詳しく記載をしていきます。
創業動機や経営者の略歴、セールスポイント、販売先などです。
公庫のフォーマットは数行しか記載するスペースがないため、別紙に詳しく書いて事業内容を説明します。
フォーマットの項目を押さえつつ、自分自身に必要な項目を追加して別紙に記入をしていきます。
たとえば、一緒に事業を行う人がいる場合は、その人の経歴や実績などを自分で加えて記入します。
<売上げの計画>
開業してからどのくらいの売上げを見込んでいるのかをExcelなどで作ります。
なるべく根拠のあるものをひと月単位で3年分計画を立てます。
売上げの計画を立てるときは控えめに計画することが大事です。
<損益の計画書>
売上げの計画が完成したら、売上げに対する原価はどのくらいか。
固定費は何が必要でいくらくらいかかるのか。
最終的に利益がいくら残るのか。
これもひと月単位で3年分計画を立てます。
<資金繰り表>
毎月の入金はいくらで出金はいくらなのかをひと月単位で計画します。
売上げの入金まで何カ月かかるのか。経費の支払いまでどのくらいの期間があるのか。などを考慮して現金の入金と出金のタイミングを表にあらわします。
注意点としては、減価償却費など費用計上されても、実際には現金が動かないものは考慮しません。
また、掛け取引など、取引の発生と実際にお金が動くタイミングが違うものには注意が必要です。
たとえば、売掛金は実際に入金がされた時に計上します。
また、この資金繰り表がとても大切な資料で、ほとんどの銀行員がこの資金繰り表を必要としています。
この資金繰り表の有無で、融資の結果がかわることもよくあります。
以上が必要最低限の資料になります。
他の金融機関に申し込む
一度融資を否決されたところに、再度申し込みをすると多くの場合不利になります。
理由としては、一度目の否決理由となった箇所がどうなっているのか、通常よりも厳しく見るからです。
であれば、一度否決された金融機関ではなく、他の所へ融資を申し込むという方法も考えられます。
たとえば、こんな事例です。
開業資金の融資を日本政策金融公庫に申し込んだが、事業計画書の甘さを理由に謝絶された。
事業計画書をブラッシュアップしても日本政策金融公庫には、一度断った履歴が残っている。
したがって、再申し込みをしても、そもそもハードルが上がっている。
そこで、日本政策金融公庫ではなく、信用保証協会の保証付きの融資に申し込む。
信用保証協会と日本政策金融公庫は情報の共有をしていないので、一度否決されたというネガティブ情報が保証協会には無い。
公庫に再申請するより保証協会を使った方が可能性が高そうだ。
というように、融資の申込み先を変えてみるという方法もあります。
融資の否決理由が大事
開業資金の融資を一度断られて、再度申し込むときの重要ポイントは
「融資を断られた理由を解決できるかどうか」です。
この理由を解決できない限りどこへ融資を申し込んでも、また断られる可能性が高いです。
創業融資を断られたから事業計画書を書き直せば良い。という単純なことではないんですね。
否決の理由がなんなのか?
まず、これを見極める必要があります。
見極めたうえで対策を考えていくことが必要です。