開業するには資金が必要です。
自分の手持ち資金で足りなければ、どこかから調達する必要があります。
今回は開業時の資金調達方法をまとめました。
少しでもお役に立つ内容であれば幸いです。
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- この記事は以下の内容で構成しています。
- 資金調達の全体像
- 開業時に使えそうな資金調達方法(融資編)
- 開業時に使える資金調達方法(補助金・助成金編)
- その他、出資などによる調達
- 資金調達方法を組み合わせる
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資金調達の全体像
資金調達の方法は何種類もあります。
どのような方法があるのでしょうか?
融資による資金調達
・親・兄弟・親族から借りる
・ノンバンクから借りる
・民間の金融機関からのプロパー融資を受ける
・日本政策金融公庫の融資
・信用保証協会の保証付きの融資
・保険・共済の貸付制度
補助金・助成金を使う
・補助金(経済産業省など)
・助成金(厚生労働省など)
出資等による資金調達
・個人投資家による出資
・ベンチャーキャピタルによる出資
・少人数私募債による出資
その他
・クラウドファンディング等
というように資金調達方法にも様々あります。
開業時に使えそうな資金調達方法(融資編)
上記ではさまざまな資金調達方法を挙げました。
では、その中でも開業時に使える方法とは何でしょうか。
まずは外部から借りる方法を記載していきます。
親・兄弟・親族・配偶者から借りる
自分の身内に資金援助をしてもらいます。
身内なので返済条件も融通がききそうです。
借りるという形よりも、完全に贈与というかたちで資金援助してもらうこともできます。
贈与してもらえると一番良いです。
この方法の難点としては、親族との関係によること。
また、「借りる」とした場合、返せなかった時に親族関係が悪化する可能性があること。
デメリットも含めて検討したいです。
ノンバンク、カードローンなどで調達
ノンバンクやカードローンを使い資金を調達する方法です。
すぐに調達できますが、開業資金としては個人的におすすめできません。
おすすめしない理由としては以下の通りです。
・金利が高い
10%以上の金利設定が普通です。そのため、開業後の資金繰りに悪影響を与える可能性があります。
長期で借りるのはNGです。
・銀行の融資が受けにくくなる
カードローンで資金調達をした後に、金利の低い日本政策金融公庫や銀行融資を申し込む場合があります。
このような場合、カードローンの残債が理由で、融資を受けられなくなることがあります。
以上のような理由により、安易に利息が高いところから借入するのはやめましょう。
ノンバンクの使い方
ただし、ノンバンクやカードローンがすべて悪いかといえばそうではありません。
使い方によっては役に立つケースがあります。事業を開始した後の短期的な借入れなどです。
たとえば、来月に売掛金の入金がある。しかし、その前に到来する仕入れの支払い資金がない。仕入れの支払いをノンバンクでしのぎ、売掛金の入金後に一括返済する。というように短期で、しかも確実に返済できるという確証があれば役立ちそうです。
(こうならないように事前に見通すことが一番ですが)
ただ短期間とはいえ、利用する場合はなるべく決算期を避けて利用したいです。
なぜなら、決算期にノンバンクやカードローンの残債があるとその事実が決算書に載ってしまうからです。
そうなると決算書を見た公庫や銀行からの借入時に不利に働いてしまう可能性がでてしまうのです。
日本政策金融公庫の創業融資制度
日本政策金融公庫とは政府系の金融機関で、日本でもっとも創業融資の実績がある金融機関です。
開業時の融資では一番始めに検討すべきところです。
長期かつ低金利での融資を行っており、全国でも毎年2万8千件ほど創業融資は実行されています。
当事務所でお手伝いさせていただいた方の8~9割は日本政策金融公庫で創業融資を受けています。
創業者向けの融資制度は以下のようなものが利用できます。
・【新創業融資制度】 もっとも有名な創業融資制度です。
・【新規開業資金】 定められた条件に該当すると利率が低減されます。
・【女性、若者/シニア起業家支援資金】 女性は無条件で、男性は年齢により優遇金利が適用されます。
・【再挑戦支援資金】 廃業歴があるなど一定条件を満たす方が利用できます。
・【中小企業経営力強化資金】 認定支援機関のモニタリングを条件とする制度です。
・【ソーシャルビジネス支援資金】 ソーシャルビジネスを開業する場合に利用でき、金利の優遇があります。
利率は大体2%台、金利の優遇が適用されれば1%台になることもあります。
信用保証協会の保証付き融資
信用保証協会とは、大企業に比べて信用力が劣る零細企業や創業者の信用を保証することで、融資をしやすくしています。
日本政策金融公庫の創業融資制度ほどではありませんが、開業時によく利用されています。
ここ3~4年は融資の実行数も増えてきているようです。
保証協会を使って融資を受けるには、各都道府県にある信用保証協会の審査に通過することが条件になります。
保証協会がOKをすれば銀行などの民間金融機関が融資を実行します。
保証を受けると、金融機関の未回収リスクが無くなるので銀行が融資をしやすくなるわけです。
誤解しやすいのですが、実際にお金を貸すのは信用保証協会ではなく金融機関になります。
日本政策金融公庫と信用保証協会の違い
この融資手法も長期間、低金利で借りることができます。
ただし、日本政策金融公庫と違い信用保証料を支払う必要があります。
信用保証付きの融資は日本政策金融公庫のように全国共通の制度ではないため、各都道府県や市区町村単位で制度が設けられています。そのため、制度の内容を調べて自分が制度を利用できるか確認する必要があります。
また、市区町村の融資制度の特徴として信用保証料を補助してくれたり、利息を補助してくれたりする自治体もあります。
ただし、多くの場合融資までの期間が長くなる傾向にあります。
信用保証協会という公的な機関が付くことによって融資を受けやすくしているため、信用力が乏しい創業期の資金調達方法に適しています。
民間金融機関からのプロパー融資
上記で信用保証協会が保証することで民間金融機関が融資する制度を紹介しました。
これに対して、信用保証協会なしで銀行などの民間金融機関が全リスクを背負って融資を実行するものが「プロパー融資」といわれるものです。
未回収の損失はすべて銀行が被るため、まだ実績がない創業したての事業者にプロパー融資をするのはリスクが高すぎる、というのが銀行のスタンスです。
なので基本的に開業時にプロパー融資を利用することは期待できません。
この状態を解消するために前述した信用保証協会が力を発揮しています。
ちなみにプロパー融資はある程度実績を積み、業績を良くして、取引銀行との関係を築いていくことで利用できるようになります。
決算書の提出時だけでなく、3ヶ月に一度といったように定期的に事業の報告や試算表の提出など、銀行との関係づくりが大切になってきます。
業績の向上と金融機関との良好な関係を作っていくことでプロパー融資を受けることができるようになります。
開業時に使える資金調達方法(補助金・助成金編)
開業時に使える資金調達方法として「補助金・助成金」があります。これもうまく使っていきたいです。
補助金・助成金は返済不要の資金です。
補助金
一般的には、事業に使用した経費の2分の1や3分の2を限度額以内で補助してくれます。
たとえばここ数年実施されている「小規模事業者持続化補助金」は、販促費に75万円使用したら、後で50万円が支給されるといった制度です。(制度は毎年変更があります)
なので、先に自分の資金で支払いをして、数か月後に補填されるようになります。
また補助金の種類は非常に多く、国や県、市町村レベルで行われるので適したものを探す必要があります。
注意点としては、募集期間が定められていることが多く、その期間内に申請する必要があります。
補助金は申請のハードルは低いですが、申請したからと言って必ず採択されるものではありません。これも覚えておかなければなりません。
助成金
とくに社員の雇用や労働環境の改善など人材関係で助成されることが多いです。
こちらは補助金のように誰でも申請できるのではなく、申請の条件が厳しいことが多いです。
その反面、条件が整えば多くの場合審査には通ります。
使えるものは使いたい
補助金や助成金は開業時だけでなく、開業してからも使えます。手間はかかりますが、使えるものは積極的に使っていきたいです。
その他、出資などによる調達
出資
個人投資家などに資金の出資をしてもらう方法もあります。
しかし、投資も以前よりは行われるようになってきたとものの、まだ日本では難しい環境です。
一概には言えませんが、誰もやったことがない先進的な事業なら出資も考えられます。一般化した業種では厳しいように思います。
クラウドファンディング
ここ数年盛んに行われるようになってきました。
購入型クラウドファンディングの事業者として、CAMPFIREやkibidango、Makuakeなど様々なプラットフォーム運営会社があります。
こちらを使ってみるのも良いかもしれません。
プラットフォーム運営会社でも会社ごとに対応に差があるので、自分に合ったところを使いたいです。
資金調達方法を組み合わせる
いくつか資金調達方法を紹介してきましたが、これまでの資金調達方法を組み合わせて使うという選択肢もあります。
協調融資
日本政策金融公庫と保証協会の保証付き融資、両方から融資を受ける方法です。
たとえば、日本政策金融公庫だけでは希望の金額を融資できないので、保証協会と組んで希望金額の融資を行うというものです。
具体的な例を挙げると、
希望金額800万円の場合
日本政策金融公庫から500万円
保証付きの融資で300万円
合計で800万円
という方法です。
融資と補助金
融資と補助金を両方使う方法です。
補助金や助成金はさきに手持ちの資金を使い、数か月後に補填されるものです。
なので、先に手持ちのお金を持っていなければいけません。
前もって融資で資金調達し、出金した金額を補助金で補填する。という方法です。
融資とクラウドファンディング
クラウドファンディングは市場調査にも使うことができます。
設定した金額を達成したりある程度の支持がえられれば、自分の事業は需要がある、お客様がいるということがわかります。
その結果を用いて融資の審査で好材料になるでしょう。
クラウドファンディングで調達した資金、融資で調達した資金の両方を使うことができるようになります。
返済義務のある融資の金額を抑える効果もあります。
最後に
開業時に利用できそうる資金調達方法を解説してきました。
一般的には日本政策金融公庫や信用保証協会の保証付き融資を使うことが多いです。
ですが、他の資金調達方法を使うという選択肢を持っておくことは大切です。
また、自己資金を多く貯めれば、外部からの資金調達金額を抑えられるので、開業後のリスクを低くすることもできます。
自己資金の蓄積と外部からの資金調達をうまく行うことは、開業時だけでなく、事業の安定と発展に欠かせない条件のひとつになります。資金調達方法もぜひ知っておきましょう。