日本政策金融公庫の創業者向け融資。
制度がいくつかあるので、何を使ったらよいのか、よくわかりません。
そんな創業融資制度を解説してみました。
ご参考になれば幸いです。
創業融資制度の概要と解説
日本政策金融公庫の「創業融資制度」といっても
いくつも制度が用意されています。
創業融資制度の概要と特徴をひとつずつ解説していきます。
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性は年齢制限なし。 男性は35歳未満か55歳以上の方が対象。
基準利率より0.4%利率が低い、特別利率Aが適用されます。
女性は無条件で、男性は年齢要件に合致すれば通常よりも利率を少し抑えて借入れが可能になります。
女性と年齢条件に当てはまる男性におすすめです。
新創業融資制度
新たに事業を始める方、事業開始後税務申告を2期終えていない方が利用可能です。
新たに事業を始める方と事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できることが条件となっています。
創業資金総額の10分の1以上とはどういうことか、
一例として、創業資金総額600万円の例をあげてみます。
創業するときの必要資金として
店舗の内装費 150万円
機械・設備 200万円
仕入れ代 100万円
その他諸経費 150万円
合計 600万円
という資金計画を立てたとします。
この場合、600万円の10分の1である60万円以上を自己資金として持っていないと、審査ができないということです。
この制度は自己資金要件をクリアすれば、基本的に誰でも利用できます。
中小企業経営力強化資金
基本的には誰でも利用できますが、
融資後、認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けることが条件となっています。
具体的には、1年ごとに税理士などの認定支援機関からのモニタリングに答える必要があります。
この制度がリリースされた当時は金利も安く、他の制度よりも通過率もよかったため頻繁に使われました。
しかし、最近は金利も上がり、制度としての魅力はあまりなくなりました。
ただ、新創業融資制度などよりも支店決済額が大きいので、1000万円以上の融資が必要な場合は利用する価値があります。
ソーシャルビジネス支援資金
NPO法人。
NPO法人以外で保育サービス事業、介護サービス事業等を営む方。
社会的課題の解決を目的とする事業を営む方。
が利用できます。
保育サービス事業と介護サービス事業に当てはまる方は、特別利率が適用されます。
また、特例として利率を上乗せすると代表者保証を付けずに済ませることも可能です。
ソーシャルビジネスを開業される方にはおすすめの融資制度です。
再挑戦支援資金
以下の全てに該当する方が利用できます。
1.廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人であること
2.廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること
3.廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること
過去にやむを得ない事情で廃業しており、その時の負債が新しい事業に影響を及ぼさないのであれば申込みができます。
ただし、ハードルは非常に高くなります。
また、融資の金額も出にくいです。
そのため、当初は少ない金額を借りて、業績を伸ばしつつ返済実績を重ねていけば、長期的には大きめの融資も可能になるでしょう。
新規開業資金
基本的には誰でも利用可能です。
各市町村で開催される「創業スクール」を修了した方は基準金利より0.4%低い特別金利Aが適用されます。
創業スクールを修了した方にはおすすめです。
以上、日本政策金融公庫の「創業融資制度」を紹介してきました。
ここからは、上記創業融資の審査のポイントをお伝えいたします。
融資審査のポイント
前の項目では6つの創業融資制度を紹介いたしました。
では、この創業融資制度を使って融資を受けるためのポイントとは何なのでしょうか。
ポイントを解説していきます。
6つの創業融資制度がありますが、
制度ごとに審査ポイントが違うということはありません。
審査上でキーポイントになるところはほぼ同じです。
特に重要視しているポイントは以下の3点です。
1、自己資金
2、開業業種の経験
3、事業計画書の内容
となります。
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
1、自己資金
・自己資金と融資額のバランス
たとえば、800万円の融資希望額に対し、自己資金が50万円だと融資は無理です。
しかし、同じ800万円という金額でも、自己資金で300万円位持っていると可能性は十分あります。
自己資金を多く持っていることは何を意味するかというと
「開業に向けてしっかり準備を積んできた」と日本政策金融公庫は評価しています。
日本政策金融公庫の職員から聞いた話では、
「自己資金を貯めてきた人は、開業にむけてしっかり準備をした人という評価をしている」とのことでした。
自己資金を貯める=開業に向けて準備した事実を通帳の履歴で客観的に証明できる。
ということになり、創業融資の審査において強力なプラス材料になります。
ちなみに、創業融資の審査では個人の通帳を必ず確認されます。
また、自己資金を多く持っておけば借入の金額を抑えることができたり、生活費に余裕を持ちながら事業をスタートできるので、自己資金の蓄積はおすすめです。
・自己資金の出どころ
通帳に入っているお金がどこから来たお金なのかも審査の対象です。
たとえば、審査時の通帳残高が毎月の給料を貯めたものであれば問題ありません。
そうではなく、「通帳にある現金は全額親族からの支援金です」
という場合、自分で貯めた自己資金よりも評価は低くなります。
なぜなら、自己資金の重要な意味である「開業に向けた準備」として評価できないからです。
ほかに「見せ金」として一時的にどこかから借りてくることも考えられます。
ですが、基本的にこのような見せ金はバレます。
このようなことをしてバレるくらいなら、何もしない方がましです。
ひとつウソがばれると他のところまで疑われますのでやめましょう。
・支払うべきものを支払っているか
毎月の電気代やガス代、携帯代、家賃など決まった時期に支払うものを支払っているのか。
これも見落としがちですが重要なポイントです。
支払いが滞っていたりすると、お金にだらしない人という評価をされてしまいます。
そのような人に本当に返済してもらえるのか、怖くてお金を貸すことができません。
だいたい3種類くらいの支払いを確認しています。
引き落としにしておくと安心ですね。
他に、税金の滞納も要注意です。
納める義務があるのに納めていない場合、基本的に融資はできません。
ただし、合法的に免税になっていて納める必要がない場合はこの限りではありません。
2、開業業種の経験
・開業する業種の経験がない人よりもある人の方が融資をしやすいです。
開業業種の経験があった方が事業も成功しやすいだろうということです。
成功しやすいということは返済もしっかり見込めますね。
経験で大事なことは勤務年数の長さではありません。
勤務年数よりも、勤務先で経験した仕事内容や実績を重視しています。
そして、勤務先での実績などは自分から言わないとわかりません。
事業計画書の略歴に実績をしっかりと書いていきましょう。
たとえば、営業実績で社内1位になったことがある人は
「20××年 年間販売数1位になり、社長賞を表彰される」
という感じで、自分の強みをアピールすることは忘れずに行いましょう。
他にも日本政策金融公庫の追跡調査では、
業種経験がない人はある人よりも貸倒率が高くなる。という調査結果をだしていました。
貸倒率が高いと当然融資はしにくくなります。
3、事業計画書の内容
・事業計画書もしっかり作っていく必要があります。
たとえば、当事務所では
「売上げ予定表」
「損益計画書」
「資金繰り表」
「事業内容等を文章化したもの」
以上の4点を必ず作成して金融機関に提出しています。
ここまで作りこんでいくと「しっかり作っていただいて」と面談の時に担当者から言われます。
事業計画がわかりやすい=事業の内容や資金計画が把握しやすい=審査しやすい=融資もできる
ということになります。
日本政策金融公庫の職員によると、事業計画書が全く体裁を成していない事はよくあると言っていました。
事業計画書が分かりにくいのでは、正確な審査ができませんね。
自己資金や経験の条件を満たしていても、事業計画書の出来が悪くて否決されては非常にもったいないです。
以上「自己資金」「開業業種の経験」「事業計画書」の3点が審査の重要ポイントです。
もちろん、これだけで審査をしているのではありません。
他にも、個人的な借入の状況や過去の経営経験、人柄、担当職員の融資姿勢など総合的な要素で結果は変わります
さいごに
ここまで日本政策金融公庫の「創業融資制度」をお伝えしてきました。
6つほど制度を紹介しましたが、
申込の時にどの融資制度を使うのか細かく決めていく必要はありません。
(経営力強化資金はべつ)
なぜかというと、
日本政策金融公庫の担当者が金利の低い制度など
借りる人に一番お得になる制度を選んでくれることがほとんどだからです。
制度選びに神経質になる必要はありません。
それよりも
・自己資金
・開業する業種の経験
・事業計画書
といった、融資の可否に直結する要素をしっかり準備して申し込むことが肝要です。