事業を営む中小企業や個人事業主の方々から、よくご相談いただく内容の一つに「融資を受けたいけれど、いくらまで借りられるのか分からない」というものがあります。
特に事業の運転資金が必要な場面では、資金調達の可否が事業の継続や発展に直結するため、不安を抱えている方が多くいらっしゃいます。
銀行や日本政策金融公庫など、金融機関が融資をする際には一定の審査基準がありますが、その基準が一般には分かりづらく、何をもとに判断されるのかイメージできない方も少なくありません。
結果として、「申し込んでみないとわからない」といった不確実性に悩み、融資申請に踏み出せない方も見受けられます。
融資を受けたいが、どれくらい借りられるのかわからない
行政書士として数多くの事業者と関わってきた中で感じるのは、こうした不安や疑問を持つ方が非常に多いという現実です。
たとえば、「決算書を提出したものの、どこを見られているのか分からない」「借入残高があるけれど、追加でいくらまで借りられるのか知りたい」といった声を耳にします。特に創業して1年〜3年ほどの事業者は、実績が乏しく、自己判断では融資の見込みを立てにくい状況にあります。
また、最近では物価高騰や人件費の上昇といった経済環境の変化により、運転資金の確保は一層重要な課題となっています。葛飾区内の様々な業種の方々が、日々の資金繰りに頭を悩ませています。こうした背景もあり、融資の「目安」を事前に知っておくことの重要性が増しています。
この記事では、行政書士としての実務経験をもとに、融資可能額の目安についてわかりやすく解説していきます。葛飾区で活動される事業者の皆様にとって、日々の資金調達を安心して進めるための指針となれば幸いです。
葛飾区の事業者が押さえるべき融資可能額の基礎知識
葛飾区で事業を始めようとする際、あるいはすでに事業を始めて1年以上が経過した方にとって、融資をいくらまで受けられるかを把握することは極めて重要です。
金融機関にとっても「どれくらい貸せるのか」を判断する目安があり、それを事前に理解しておくことで、融資の申し込みがスムーズに進み、不要な不安や手戻りを防ぐことができます。
創業前の融資目安は「自己資金×2」が基本
まず、創業前の方が融資の目安とすべきなのは「自己資金の2倍」です。
これは日本政策金融公庫などが創業融資を検討する際によく使う目安であり、比較的わかりやすいと言えます。
たとえば、自己資金が300万円ある場合、その2倍にあたる600万円までの融資であれば、一定の条件を満たしていれば現実的に通る可能性がある、ということです。
ただし、これはあくまで目安であり、事業経験の有無、事業計画の妥当性、個人信用情報など、他の要素も含めて総合的に判断されます。
特に葛飾区のような地域では、地域密着型の業種(例:飲食店や地域密着の小売業など)が多いため、過去の業務経験や地元とのつながりも重要な評価ポイントになります。
1期終了後は「借入月商倍率」で判断
一方、すでに事業を開始して1期(1年)を終えた場合、融資の目安は「借入月商倍率(かりいれげっしょうばいりつ)」によって判断されるのが一般的です。この指標は、直近の決算をもとに、毎月の平均売上(平均月商)の何ヶ月分の借入があるかを見るものです。
たとえば、年商2400万円であれば、平均月商は200万円。ここに「3ヶ月分」をかけた600万円が借入の青信号ラインとなります。
つまり、既存の借入残高と希望する融資額の合計が600万円以内であれば、金融機関からも比較的スムーズに融資が認められる可能性が高くなります。
この「月商の3ヶ月=青信号」「6ヶ月=黄信号」「それ以上=赤信号」という目安は、あくまで運転資金の判断基準ですが、非常に実務的で使いやすい考え方です。
私自身も融資相談の際に参考にしており、事前に資金調達の現実的なラインを見極めるうえで役立っています。
行政書士としては、こうした数値的な根拠をもとに、書類の作成や資金計画の精査をお手伝いすることで、融資の成功率を高めるサポートが可能です。
行政書士が解説する「借入月商倍率」の具体的な使い方
融資の目安を判断する上で、事業開始から1年以上経過した方にとって最も実用的なのが「借入月商倍率(借入れげっしょうばいりつ)」です。
これは金融機関が企業の借入金額を評価する際に用いる財務指標の一つで、現在の借入残高と月ごとの売上とのバランスを見ることで、「これ以上借り入れても大丈夫か?」という安全性を測るためのものです。
この指標を理解しておくことで、自社がどの程度まで融資を受けられる可能性があるかを事前に予測でき、融資の準備や戦略が立てやすくなります。
計算方法と判断基準(青・黄・赤信号)
借入月商倍率の計算は非常にシンプルです。
まず、直近の決算から「年間売上(年商)」を把握し、それを12で割って「平均月商」を出します。
次に、その平均月商に対して、現在の借入残高が何ヶ月分に相当するかを計算するだけです。
たとえば、年商2400万円の事業者であれば、平均月商は200万円(=2400万円÷12)。
仮に借入残高が600万円あった場合、600万円÷200万円=「3」となり、借入月商倍率は「3」となります。
この倍率に対する判断基準は以下のとおりです。
- 月商の3ヶ月分以内:青信号(金融機関が安心して融資できるライン)
- 月商の6ヶ月分以内:黄信号(融資可能だが慎重な審査が行われる)
- 月商の6ヶ月超え:赤信号(融資が難しくなる可能性が高い)
この基準は運転資金に限った目安であり、設備資金など長期投資目的の借入では異なる評価になります。とはいえ、日常的な資金繰りを安定させる上では、この基準が非常に有効です。
実際のケーススタディで理解を深める(例:A社の事例)
具体的な事例を見て、借入月商倍率の使い方をさらに理解しましょう。
【A社の概要】
- 年商:1500万円
- 平均月商:125万円
- 借入残高:なし
この場合、A社が新たに融資を希望する際、借入月商倍率で「3」までの範囲内であれば青信号、つまり無理なく借りられるラインとされます。
125万円×3ヶ月=375万円なので、400万円であれば比較的スムーズに融資が通ると判断されます。
では、A社が1000万円の融資を希望した場合はどうでしょうか。
この金額は月商の8ヶ月分に相当し、赤信号のラインとなります。審査が厳しくなり、減額や否決される可能性が高くなります。
さらに、A社にすでに200万円の借入残高があった場合、新たな融資希望額は最大200万円程度までに抑えた方が、借入月商倍率「3」を維持できます。
すでに200万円を借りているという前提で、さらに400万円を借りようとすると合計600万円、倍率は「4.8」となり、黄信号寄りの審査になります。
このように、借入月商倍率を使って事前に数値的なラインを引いておくことで、融資の見通しを立てやすくなり、金融機関との交渉もスムーズに進みます。行政書士としては、こうした指標を活用した資金計画の策定支援も日常業務の一部です。
融資金額は目安だけでは決まらない!葛飾区でも使える注意点
借入月商倍率などの数値を使って融資可能額の目安を算出することは、資金計画を立てるうえで非常に有効です。しかし、実際の融資審査においては、その数値だけで判断されるわけではありません。金融機関は融資の可否や金額を決める際、財務指標以外にも多くの要素を総合的に評価しています。
事業者様の中にも、「借入月商倍率的には問題ないはずなのに、希望額の融資を受けられなかった」という経験をされた方は少なくありません。これは、融資の審査において目安とは別の”要素”も同時に重視されるためです。
赤字や信用情報など審査に影響する要因
まず最も大きな影響を与えるのが「赤字決算」です。
たとえ売上が順調に推移していても、営業利益が赤字であったり、累積損失が大きい場合には、金融機関は「返済能力に不安がある」と判断し、融資額を大きく減額する、あるいは融資そのものを見送ることもあります。
また、代表者本人や会社の「信用情報」も重要な判断材料です。
過去にカードローンや住宅ローンの延滞があったり、消費者金融での借入履歴が信用情報機関に登録されている場合には、企業としては健全に見えても、融資が難航することがあります。
さらに、資金使途が不明瞭な場合も要注意です。
「赤字補填」や「運転資金としか言えない」といった、曖昧な理由ではなく、「増加した仕入れ対応のため」や「新たな顧客開拓に伴う広告費」など、明確で前向きな使い道が必要とされます。
前向きな借入れと金融機関との関係性が鍵
一方で、借入月商倍率を超えていても、「前向きな借入れ」であれば融資が通るケースも多くあります。
具体的には、事業拡大や雇用拡充、売上増加にともなう仕入れ資金など、企業の成長に直結する資金使途がある場合、金融機関は前向きに審査してくれる傾向があります。
ここで重要になるのが、日頃からの金融機関との関係性です。
定期的に実績を報告している、決算書を毎年きちんと提出している、経営者が資金繰りを正しく理解している——このような信頼関係が構築されている企業には、金融機関も安心して資金を貸すことができます。
上手に資金調達を行っている事業者は、地域金融機関とのつながりが強いケースも多く、普段から取引銀行の担当者と情報交換を行っておくことが、融資を有利に進めるための大きなポイントになります。
行政書士としては、こうした“評価軸”を考慮しながら、融資申請書類の作成や資金計画の明確化をサポートし、より現実的で実現可能な資金調達をお手伝いしています。
融資の成功事例と失敗事例から学ぶ判断ポイント
融資の成否は、単に数字上の指標や書類の整備だけで決まるものではありません。
多くの事業者を支援してきた経験から言えるのは、「どのように融資を申請し、どんな姿勢で金融機関と向き合うか」が結果を大きく左右するということです。
ここでは、行政書士として実際に関わった融資の成功事例と失敗事例をもとに、融資を成功させるための判断ポイントをお伝えします。
行政書士として支援したケース紹介(匿名事例)
【成功事例:松戸市の足場工事業B社】
B社は松戸市で足場工事を営んでいる個人事業主で、開業から3年が経過していました。
年商は1700万円、平均月商は約140万円。既存の借入はありません。
借入月商倍率の指標から見れば、400万円程度の借入が可能な状況でした。
当初の相談内容は「500万円を借りたい」というものでした。月商倍率の基準をやや上回る金額ではありましたが、以下の点が成功のカギとなりました。
- 売上げが増加傾向にあり、今後も成長が見込めたこと。
- 受注状況が安定していたこと。
行政書士としては、資金計画書や事業計画書を第三者的視点からブラッシュアップし、金融機関が納得しやすい形に整えました。その結果、希望額満額の500万円で融資が実行されました。
【失敗事例:足立区のIT会社C社】
一方で、ご相談の結果融資は難しいと判断した事例もあります。
C社は足立区でIT会社を営む事業者で、事業歴は5年。年商は約75000万円、借入残高は約4500万円でした。
この事業者が希望したのは運転資金としての1000万円の融資でしたが、ご相談の結果厳しいと判断せざるを得ない状況でした。原因は以下の通りです。
- 直近3期連続で営業赤字が出ており、今後の黒字転換が見込めない内容だった。
- 売上に対して借入れが多すぎた。
- 経理処理がずさんで、決算書の信頼性に疑念があった。
このケースでは、上記の理由から「融資の可能性はほとんどない」と判断したため、依頼はお受けできませんでした。
このように、数字だけではなく、事業の将来性や決算書の内容も融資成功の大きな鍵を握っています。行政書士としては、単に書類を整えるだけでなく、事業の背景や意図を丁寧に伝える支援を行うことで、融資の成功率を高めることができます。
まとめと結論(葛飾区の事業者の方へ)
融資を受けるにあたって、事前に「いくら借りられるのか」という目安を知っておくことは、資金計画の第一歩です。特に葛飾区のように中小企業や個人事業主が多く活動する地域では、限られた資源の中で効率よく経営を行うためにも、融資の判断基準を理解しておくことが経営安定のカギとなります。
本記事でご紹介した「借入月商倍率」は、融資の目安として非常に実践的で、金融機関側も実際に活用している指標です。月商の3ヶ月以内であれば「青信号」、6ヶ月以内なら「黄信号」、それ以上は「赤信号」という区分を参考にすれば、現在の自社の借入状況から現実的な融資額が見えてきます。
しかし、この目安はあくまでも「目安」にすぎません。
実際には、赤字決算や信用情報の問題、資金使途の不明確さといった要因が審査に影響を与えることがあります。逆に、前向きな事業展開のための融資であれば、目安を少々超えていても、金融機関が柔軟に対応してくれるケースも多く見られます。
葛飾区の事業者の皆様にお伝えしたいのは、「数字」と「姿勢」の両面で準備を整えておくことの大切さです。決算書の整理、資金計画の明確化、事業計画の見える化など、丁寧に準備することで、金融機関との信頼関係を築きやすくなり、結果的に融資が通りやすくなります。
行政書士として現場で感じるのは、「もっと早く相談してくれれば、違った結果になったかもしれない」というケースが意外と多いということです。
事業が軌道に乗っている時こそ、将来の資金需要に備えて融資の可能性を把握し、戦略的に動くことが重要です。資金が必要になってから慌てて動くのではなく、余裕をもった準備こそが成功への第一歩です。
もし、融資に関して「いくらまで借りられるか不安」「金融機関との付き合い方がわからない」「事業計画書の作り方が不安」といったお悩みがあれば、ぜひ早めに専門家にご相談ください。
行政書士は、融資に必要な書類の作成から、資金調達の戦略まで幅広くサポートいたします。
葛飾区で事業をされている皆様が、必要な資金を確実に手にし、安心して経営に専念できるよう、今後も実務に根ざした情報提供と支援を行ってまいります。
融資相談は行政書士へ|葛飾区対応のサポート案内
融資に関する悩みや不安を抱えたとき、頼りになるのが行政書士です。
特に融資についてよく理解した専門家の存在が、資金調達を円滑に進めるための大きな支えとなります。
行政書士は、融資に必要な書類の作成はもちろん、事業計画の整備、資金使途の明確化、さらには金融機関とのコミュニケーションの支援まで、融資プロセス全体を幅広くサポートすることができます。
特に創業時や資金繰りに課題を感じている中小企業・個人事業主にとっては、頼れるパートナーとなる存在です。
葛飾区では、業種や規模に関わらず、多くの事業者が運転資金や設備投資に関する融資ニーズを抱えています。たとえば、飲食業・小売業・建設業など、日常的にキャッシュフローの管理が求められる業種においては、事前に借入可能額の目安を知っておくことで、余裕のある資金計画が立てられます。
行政書士に相談するメリットは、単なる書類作成代行にとどまりません。以下のような付加価値を提供できる点が強みです。
- 金融機関が納得しやすい論理的な事業計画書の作成
- 借入月商倍率など数値的根拠に基づいた資金シミュレーション
- 過去の事例を踏まえた融資戦略の提案
- 審査時にマイナスになりうる要素の洗い出しと改善提案
また、金融機関との関係構築についてもアドバイスが可能です。葛飾区の地元金融機関との付き合い方や、審査時に好印象を与えるコミュニケーションのポイントなど、経験に基づいた具体的なアドバイスが得られます。
融資は、単なる資金調達ではなく、事業の未来を広げるための「戦略的な選択肢」です。
自社の成長ステージに応じた最適な資金調達を行うためにも、専門家の力を借りることで、リスクを最小限に抑えつつ、チャンスを最大限に活かすことができます。
「融資について誰に相談すればいいかわからない」「書類の書き方に自信がない」「不安要素があって申し込みに踏み切れない」と感じている方は、ぜひ一度、行政書士にご相談ください。
事業の未来を確かなものにするために、融資のことは専門家と一緒に取り組んでいきましょう。