事業融資を検討しているものの、「直近の決算が赤字だから難しいのではないか」「金融機関に相談しても門前払いされるのでは」と不安を感じている事業者は少なくありません。
特に、事業を真剣に続けてきたにもかかわらず赤字決算になってしまった場合、その事実だけで融資を諦めてしまうケースも多く見受けられます。
しかし実際の融資審査では、赤字=即不承認という単純な判断がされるとは限りません。
赤字の金額や原因、今後の改善見込み、直近の業績推移など、さまざまな要素を総合的に見て判断されます。そのため、「赤字でも通るケース」と「残念ながら通らないケース」には明確な分かれ目が存在します。
本記事では、事業融資において赤字決算がどのように評価されるのか、どのような条件であれば可能性が残るのかについて、行政書士の視点から分かりやすく解説していきます。
赤字決算を理由に融資を諦める前に、確認していただきたいポイントを整理していきます。
事業融資で赤字決算でも通るケースの重要ポイント
事業融資の審査において、赤字決算という事実だけで即座に否決されるとは限りません。
金融機関が重視しているのは、「なぜ赤字になったのか」「その赤字は今後も続くのか」「返済原資を確保できる見込みがあるのか」という点です。ここでは、赤字決算でも事業融資が通るケースに共通する重要なポイントについて、行政書士の視点から解説します。
赤字額が許容範囲内の場合に評価されるポイント
まず、赤字額が許容範囲内である場合は、融資審査において大きなマイナス評価にならないケースがあります。たとえば、売上規模に対して赤字額が小さい、または自己資本が十分にあり財務体質が極端に悪化していない場合などです。
単年度でわずかな赤字が出ているだけで、過去は黒字決算が続いていたような場合には、「一時的な業績のブレ」として受け止められる可能性があります。
赤字額の絶対値だけでなく、売上高や粗利率、固定費の構造などを整理し、金融機関に分かりやすく説明することが重要になります。
一時的な要因による赤字決算が考慮されるケース
次に、一時的な要因による赤字決算であることが明確なケースも、融資が前向きに検討されやすくなります。例えば、店舗の移転による物件取得費の増加、取引先の倒産による売掛金の損失計上などが挙げられます。これらは恒常的な経営不振とは異なり、原因がはっきりしており、一過性のもので、今後の改善見込みを示しやすい点が評価されます。
さらに、直近の試算表や月次決算で黒字基調に転じている場合や、受注増や契約済み案件があり売上回復の根拠を示せる場合も重要な判断材料になります。
赤字決算であっても、「黒字化がほぼ確実である」ことを具体的な数字と事業計画で説明できれば、金融機関の見方は大きく変わります。
このように、赤字決算でも事業融資が通るかどうかは、その中身と説明の仕方次第です。単なる決算書の提出にとどまらず、赤字の理由と今後の見通しを整理し、金融機関が納得できる形で伝えることが欠かせません。
赤字決算でも融資を受けた事例はこちら⇓
事業融資で赤字決算で通らないケースの注意点
事業融資において赤字決算であっても通る可能性がある一方で、残念ながら審査に通らないケースにも共通する特徴があります。
金融機関は「赤字であること」と、「今後も返済ができないリスクが高いかどうか」を厳しく見ています。そのため、赤字の内容や財務状況によっては、融資が極めて難しくなる点に注意が必要です。
行政書士が見る審査落ちしやすい決算内容とその理由
行政書士の立場から見て、特に審査落ちしやすいのは、赤字が慢性化している決算内容です。
複数年にわたって連続赤字が続いている場合、「一時的な不調」ではなく「構造的な問題がある」と判断されやすくなります。
売上が足りていないにもかかわらず、固定費が見直されていない、利益率が改善していないといった状況は、今後の黒字化を見込めないため金融機関にとって大きな懸念材料です。
また、債務超過に陥っている場合も、審査は厳しくなります。
自己資本がマイナスの状態では、万が一返済が滞った際の安全余地がなく、金融機関としてはリスクを取りにくくなります。
また、役員貸付金が多額に残っている、関連会社や知り合いの会社への貸付など、財務内容が不透明な決算書も評価を下げる要因となります。
さらに、赤字の原因が説明できない、または説明があいまいなケースも注意が必要です。
「なんとなく売上が落ちた」「経費が増えた」といった抽象的な説明では、審査担当者の不安を払拭することはできません。行政書士としては、数字の裏付けをもとに、赤字の要因を具体的に説明できない決算は、審査上不利になると考えています。
改善見込みが示せない場合に不利となるポイント
赤字決算で最も致命的なのは、今後の改善見込みが示せないことです。
たとえば、売上回復の具体策がなく、事業計画が作成されていない場合、金融機関は「この赤字は今後も続く」と判断せざるを得ません。数字に基づかない楽観的な見通しや、根拠のない黒字予測も、かえって信頼性を損なう結果になります。
また、直近の試算表や月次決算でも赤字が続いている場合、決算期後に状況が好転していないと判断されやすくなります。資金繰り表が作成されていない、返済原資の説明ができないといった点も、審査上の大きなマイナス要素です。
このように、赤字決算でも通らないケースには、共通して「説明不足」と「将来性の不透明さ」が見られます。単に融資を申し込むのではなく、赤字の原因と改善策を整理し、数字で示す準備を整えることが、融資成功への最低条件であるといえるでしょう。
業歴が浅く赤字でも事業融資が通る可能性がある理由
業歴が浅い事業者の場合、赤字決算であっても事業融資が前向きに検討されるケースは少なくありません。金融機関は、創業間もない時期は売上や利益が安定しにくいことを前提として審査を行っており、成熟企業と同じ基準で判断しているわけではないからです。そのため、業歴の浅さと赤字を理由に、必ずしも融資が否決されるわけではありません。
特に創業から1〜3年程度の事業者については、初期投資や広告宣伝費、人件費などが先行し、黒字化までに時間がかかることは珍しくありません。こうした状況を踏まえ、金融機関は直近の決算が赤字でも、「売上げが増加しており黒字化が見込める」「最近数ヶ月は安定して黒字になっている」という状況であれば前向きに判断する可能性があります。
直近数ヶ月で黒字化に成功した場合の評価ポイント
業歴が浅く赤字決算であっても、直近数ヶ月の業績が黒字に転じている場合、審査上は大きなプラス材料となります。月次試算表や売上推移を確認し、黒字化が一時的なものではなく、継続性があると判断されれば、金融機関の評価は大きく変わります。
評価されやすいポイントとしては、売上の増加が明確であること、粗利率が安定していること、固定費が売上規模に見合っていることなどが挙げられます。
また、受注増加や継続契約があり、今後の売上見込みを具体的に示せる場合も有利です。
単に「最近黒字になった」と伝えるのではなく、数字で根拠を示し、再現性がある黒字であることを説明することが重要だといえます。
創業期特有の赤字が審査でどう扱われるか
創業期に発生する赤字は、金融機関にとって必ずしもネガティブな評価とはなりません。むしろ、事業立ち上げのために必要な支出として、ある程度想定内と見なされるケースもあります。
設備投資やシステム導入、販促活動など、将来の売上につながる支出であれば、その内容が合理的であるかどうかが重視されます。
一方で、創業期の赤字であっても、売上が低迷している、黒字化の見込みがないという場合、審査は厳しくなります。
赤字決算でも事業融資を通すための具体的な対策
赤字決算の状態で事業融資を通すためには、「赤字である理由」と「今後の改善策」を明確に示すことが不可欠です。
金融機関は過去の決算だけを見て判断しているわけではなく、将来にわたって返済が可能かどうかを重視しています。そのため、現状を正しく整理し、数字に基づいた説明ができるかどうかが、融資の可否を大きく左右します。
まず重要なのは、赤字の原因を具体的に分析することです。
売上減少によるものなのか、原価や人件費の増加によるものなのか、あるいは一時的な投資による赤字なのかを明確に分けて説明する必要があります。原因が整理されていないまま融資を申し込むと、「経営状況を把握できていない」と判断され、審査上不利になる可能性があります。
また、直近の月次試算表や資金繰り表を用意し、現在の経営状況が改善傾向にあることを示すことも重要です。決算書だけでは見えない直近の数字を提示することで、金融機関に安心感を与えることができます。
行政書士がサポートする事業計画書と資金繰り改善の考え方
赤字決算でも融資を通すための最大の武器が、説得力のある事業計画書です。
行政書士がサポートする事業計画書では、単なる売上予測ではなく、実現可能性の高い数値計画を重視します。売上の根拠、利益率の改善策、経費削減の具体策などを明示し、「なぜこの数字が達成できるのか」を説明できる内容にすることがポイントです。
さらに、資金繰り改善の視点も欠かせません。
いくら将来的に黒字化できる計画であっても、当面の資金繰りが不安定であれば、融資審査ではマイナス評価となります。入金サイトと支払サイトのバランス、借入金の返済額が事業規模に見合っているかなどを整理し、無理のない返済計画を提示することが重要です。
行政書士は、こうした事業計画や資金繰りを客観的な立場で整理し、金融機関が理解しやすい形にまとめる役割を担います。赤字決算という不利な状況であっても、適切な準備と専門家のサポートがあれば、事業融資の可能性を十分に高めることができるでしょう。
まとめと結論
赤字決算であるという理由だけで、事業融資を最初から諦めてしまう事業者は少なくありません。
しかし、これまで解説してきたとおり、融資審査では「赤字か黒字か」という結果だけで判断されるわけではなく、その中身や背景、そして今後の見通しが重視されます。赤字決算であっても、通るケースと通らないケースには明確な分かれ目が存在します。
赤字でも融資が通る可能性があるのは、赤字額が許容範囲内である場合や、一時的な要因による赤字であることが説明できる場合、また業歴が浅く成長過程にあると判断される場合などです。
特に、直近の月次決算で黒字化している、売上回復の根拠が明確である、改善策が数字で示されているといった状況は、金融機関にとって前向きな判断材料となります。
一方で、赤字が長期間続いているにもかかわらず、原因分析や改善策が示されていない場合や、資金繰りの見通しが立っていない場合は、融資が難しくなる傾向にあります。
「経営状況を把握できていない」「将来性が見えない」と判断されることが、最大のリスクだといえるでしょう。
赤字決算で事業融資を検討する際に最も重要なのは、現状を正しく理解し、金融機関に対して分かりやすく説明できる準備を整えることです。決算書や試算表をもとに、赤字の理由、今後の改善策、返済原資を明確にし、根拠のある事業計画を示すことで、融資の可能性は大きく変わります。
赤字という事実に目を背けるのではなく、正面から向き合い、適切な対策を講じることが、事業融資成功への第一歩です。赤字決算で悩んでいる事業者こそ、冷静な判断と入念な準備を行い、次の成長につながる資金調達を目指していきましょう。
行政書士に相談する理由とお問い合わせ情報(事業融資サポート対応)
赤字決算の状態で事業融資を検討する場合、事業者自身だけで対応しようとすると、「何をどこまで説明すればよいのか分からない」「金融機関にどう伝えれば評価されるのか不安」といった壁に直面しがちです。こうした場面で、行政書士に相談することには大きな意味があります。
行政書士は、決算書や試算表、資金繰り表といった資料をもとに、融資審査で見られるポイントを踏まえながら、事業内容や財務状況を整理する専門家です。
赤字決算であっても、その原因や背景を客観的に分析し、「一時的な赤字なのか」「改善の見込みがあるのか」を明確に言語化することで、金融機関に伝わりやすい形へと整えていきます。
特に事業融資では、事業計画書の完成度が結果を左右します。
行政書士がサポートする事業計画書は、単なる希望的観測ではなく、数字に裏付けられた現実的な計画である点が特徴です。売上の根拠、経費削減や利益改善の具体策、返済計画との整合性などを丁寧に整理することで、金融機関からの信頼性を高めることができます。
また、行政書士は金融機関とのやり取りを想定した準備にも強みがあります。
想定される質問や懸念点を事前に洗い出し、説明のポイントを整理することで、面談時の不安を軽減し、スムーズな対応が可能になります。
赤字決算という不利な条件があるからこそ、第三者である専門家の視点が、融資成功の可能性を高める要素となります。
さらに、融資に強い行政書士であれば、これまでの融資事例や、金融機関の審査傾向も熟知しているため、より的確なサポートが可能です。
初回の相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせいただければと思います。
詳しくはこちら|融資サポート専門【かきざき行政書士事務所】

