起業資金を支援する機関があることをご存知でしょうか。
日本では国の機関が融資というかたちで起業を支援しています。
今回はその公的機関をご紹介していきたいと思います。
この記事では以下の内容に触れています。
・創業融資という形で支援
・そもそも日本政策金融公庫とは?
・公庫は起業時の融資の時の第一候補
・融資なので当然審査がある
・融資が難しいケースもある
創業融資という形で支援
では、起業資金を融資する公的機関とはなんでしょうか。
それは「日本政策金融公庫」という政府系の金融機関です。
創業融資制度を利用することで起業資金の融資を受けることができます。
あくまでも「融資」ということなのでもちろん返済が必要です。
利息が1~2%台の創業融資制度が使えるので、
起業する時にはここから融資を受けて資金の調達をしておきたいところです。
そもそも日本政策金融公庫とは?
日本政策金融公庫は100%政府出資の政府系金融機関です。
政府系の金融機関のため、その時々の政策に沿った融資を行います。
ここ数年間は、創業や事業承継、ソーシャルビジネスを積極的に支援しています。
地震や台風といった災害などの非常時にも融資支援を行っており、最近ではコロナの特別貸付制度が記憶に新しいところです。
また、国民生活事業部と中小企業事業部が存在していて、創業期は国民生活事業部を利用します。
公庫は起業時の融資の時の第一候補
事業用資金の調達先には銀行や信用金庫、信用組合とありますが、
起業時に融資を検討する場合は「日本政策金融公庫の創業融資制度を使う」というのがまず候補にあがってきます。
日本政策金融公庫は日本で一番創業融資の実績がある金融機関です。
コロナ以前は毎年2万6千~2万8千社の創業者へ融資をしています。
ちなみにコロナ禍の2020年は4万社に創業融資を実行しました。
なぜ4万社に増えたかというと、起業して1年立たないうちにコロナで影響を受けた事業者に融資したことが要因です。
また、創業者向けの融資制度をいくつも用意しており、長期間、低金利での融資が受けられるのも特徴です。
当事務所でお手伝いをさせていただいた案件でも日本政策金融公庫を使うことが多く、
難しめの内容でも融資をしていただくケースがあります。
民間金融機関は選ぶ必要がある
融資なら近所の銀行に相談すればよいではないかとなりますが、どこの銀行でもよいというものではありません。
特に、三菱UFJ銀行やみずほ銀行といった大手の都市銀行は起業フェーズでの融資には向きません。
企業規模が巨大な都市銀行にとって、開業資金のように数百万円単位の融資は少額の部類に入ります。
融資金額の小さい創業融資を扱っても、銀行の業績や営業マンのノルマ達成にほとんどプラスになりません。
そのため、申し込みに行っても敬遠されることが多いのです。
その反面、信金や信組などでは融資を受けることができます。
信金や信組、地方銀行といった民間金融機関については、また別の記事で解説する予定です。
融資なので当然審査がある
創業融資に強い日本政策金融公庫ですが、
融資を申し込んだすべての人にお金を貸すかと言えばそういう事ではありません。
融資を受けるには審査を通る必要があります。
では、審査を通過するためにはどうすれば良いのでしょう?
審査の重要なポイント
審査の大きなポイントとしては3つあります。
1、自己資金額と融資希望金額のバランス
2、開業する業種の経験があるかないか
3、事業計画書の内容
この3点を含めて総合的に可否を決めています。
自己資金と融資額のバランス
自己資金と融資額のバランスとはどういうことかというと、
融資額に対して自己資金をどれくらい持っているかということです。
公庫の「新創業融資制度」では制度上、自己資金は総事業費の10分の1あれば申込み可能となっています。
しかし、実際の審査では現在でも3分の1あると望ましいとされています。
たとえば、おなじ500万円の融資を希望する場合でも、
自己資金を200万円持っているAさんと50万円持っているBさんでは、
200万円持っているAさんの方が満額融資を受けやすくなります。
一方のBさんが500万円の満額を獲得するのはかなりハードルが高くなり、
減額対応や否決など、希望通りの融資が受けられない可能性が高くなります。
開業する業種の経験があるかないか
開業業種の経験があった方が事業も成功しやすいだろうということです。
開業業種の経験で大事なことは勤務年数ではありません。
勤務年数よりも、勤務先で経験した仕事内容や実績を重視しています。
そして、勤務先での実績などは自分から伝えていかないと審査担当者にはわかりません。
事業計画書の略歴に実績をしっかりと書いていきましょう。
他にも日本政策金融公庫の追跡調査で、
業種経験がない人はある人よりも貸倒率が高くなる、という調査結果をだしていました。
貸倒率が高いと当然融資はしにくくなります。
事業計画書の内容
事業計画書ではポイントをおさえつつ、説得力のある計画書を作成していく必要があります。
たとえば、当事務所では
「売上げ予定表」
「損益計画書」
「資金繰り表」
「事業内容等を文章化したもの」
以上の4点を必ず作成して日本政策金融公庫に提出しています。
ここまで作りこんでいくと「しっかり作っていただいて」と面談の時に担当者から言われます。
事業計画がわかりやすい=事業の内容や資金計画が把握しやすい=審査しやすい=融資もできる
ということになります。
融資が難しいケースもある
融資が難しくなるケースというのも存在します。
その一例をあげます。
個人信用情報がブラック
個人信用情報に支払いの遅延などの記録が残っていると厳しくなります。
CICという個人信用情報機関で自分の記録を見ることができます。
その情報にキズがあると厳しくなります。
税金を滞納している
税金を滞納している場合、基本的に融資を受けることができません。
家賃や公共料金の延滞、滞納がある
審査では個人の預金通帳を必ず見せます。
何度も期日どおりに支払いをできていないことがわかると厳しくなります。
自己資金がタンス預金で通帳に記載がない
審査の際、自己資金は客観的に証明する必要があります。
証明できなければ、いくら自己資金を持っていても評価してくれません。
その典型的なものがタンス預金です。
そのため、自己資金は通帳で管理する必要があります。
消費者金融などに多額の借り入れがある
消費者金融やカードローンの残債が数百万円あるようだと厳しくなります。
なぜなら、既にある借金のうえに公庫の返済も加わると、事業の資金繰りが圧迫されると懸念があるからです。
・過去に犯罪歴がある
公庫は犯罪歴を調べることができるため、基本的に厳しいです。
さいごに
日本政策金融公庫は起業資金の融資をしてくれます。
融資を受けるには当然審査に通る必要があります。
審査に通過するには条件がありますが、
そのいくつかは過去の積み重ねによるものです。
その最たるものが自己資金や開業する業種の経験についてです。
この2つの重要ポイントは過去のことなので、今からすぐに変えることができません。
起業資金の融資を受けるための準備はすでに始まっていたともいえるでしょう。