開業するには多額のお金が必要です。
その際、銀行からの融資も選択肢の一つです。
今回は、開業時に融資をしてくれる金融機関はどこなのか解説します。
特に、低金利で長期の借入れができる公的融資を取り上げています。
少しでもお役に立つ内容であれば幸いです。
日本政策金融公庫の創業融資制度を使う
開業する際の融資といえば、まずはここ「日本政策金融公庫」です。
全国の中小、零細企業に幅広く融資をしている政府系の金融機関になります。
この日本政策金融公庫の創業融資制度を利用します。
多くの創業者が使う日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の発表によると、平成30年度の創業融資実績は2万7979企業、1857億円となりました。
ここ3年間は約2万8千企業に創業融資を実行しています。
このように、毎年安定して多くの創業企業に融資を実行しているのが日本政策金融公庫です。
したがって、これから創業融資を申し込むのであれば、実績が多い日本政策金融公庫を検討するというのがセオリーになります。
創業融資制度の解説
日本政策金融公庫には創業融資制度がいくつかあります。
制度の概要と特徴をひとつずつ解説していきます。
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性は年齢制限なし。 男性は35歳未満か55歳以上の方が対象となっています。
基準利率より0.4%利率が低い、特別利率Aが適用されます。
女性は無条件で、男性は年齢要件に合致すれば通常よりも利率を少し抑えて借入れが可能になります。
女性や35歳未満、55歳以上の男性にはおすすめです。
新創業融資制度
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方が利用可能です。
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できることが条件となっています。
創業資金総額の10分の1以上とはどういうことか、
一例として、創業資金総額500万円の例をあげてみます。
創業するときの必要資金として
店舗の内装工事費 100万円
機械・設備 200万円
仕入れ代 100万円
その他諸経費 100万円
合計 500万円
という資金計画を立てたとします。
この場合、500万円の10分の1である50万円以上を自己資金として持っていないと、融資対象になりません。
中小企業経営力強化資金
基本的には誰でも利用できます。
ただし、融資後に税理士など「認定経営革新等支援機関」による指導および助言を受けることが条件となっています。
具体的には、1年ごとに認定支援機関からのモニタリングに答える必要があります。
この制度が開始された当時は金利も安く、他の制度よりも通過率もよかったため頻繁に使われました。
しかし、最近は金利も上がり、制度としての魅力はあまりなくなりました。
ただ、新創業融資制度などよりも支店決済額が大きいので、1000万円以上の融資が必要な場合は利用する価値があります。
ソーシャルビジネス支援資金
以下の方が利用できます。
NPO法人。
NPO法人以外で保育サービス事業、介護サービス事業等を営む方。
社会的課題の解決を目的とする事業を営む方。
保育サービス事業と介護サービス事業に当てはまる方は、特別利率が適用されます。
また、特例として利率を上乗せすると代表者保証を付けずに済ませることも可能です。
ソーシャルビジネスを開業される方にはおすすめの融資制度です。
再挑戦支援資金
以下の全てに該当する方が利用できます。
1.廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人であること
2.廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること
3.廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること
過去にやむを得ない事情で廃業しており、その時の負債が新しい事業に影響を及ぼさないのであれば申込みができます。
ただし、ハードルは非常に高くなります。
また、融資の金額も出にくいです。
そのため、当初は少ない金額を借りて、業績を伸ばしつつ返済実績を重ねていけば、長期的には大きめの融資も可能になるでしょう。
過去の廃業理由を記載した書面を提出します。この書面の様式は窓口でもらうことができます。
新規開業資金
基本的に誰でも利用可能です。
各市町村で開催される「創業スクール」を修了した方は基準金利より0.4%低い特別金利Aが適用されます。
創業スクールを修了した方は、終了を証明する書類のコピーを提出しましょう。
同時に創業スクールを修了したことを伝えることもお忘れなく。
創業スクールの話題が出たので補足的なことを追加すると、
創業スクールを修了したという事実は、融資審査にプラスになります。
これは、当事務所のお客様の事例で文京区の創業スクールを卒業した方がいらっしゃいました。
大手町の公庫で面談があり、私も面談に同席したのですが、公庫の担当職員からこんな事を言われました。
「創業スクールを修了していると、審査にプラスになります」
ということで、創業スクールを卒業したら忘れずに伝えましょう。
事業計画書の経歴欄に書いてしまってもよいでしょう。
以上融資制度の名称と特徴をお伝えしてきました。
ただ、制度ごとに審査基準が異なるかというと、そんなことはありません。
基本的には同じです。(再挑戦支援資金以外)
自己資金と開業業種の経験、事業計画書の内容などが審査でポイントとなります。
どの融資制度を使うかよりも、まずは審査に通る条件を整えていくことが最優先です。
制度の選択はその後で十分です。
信用保証協会の保証付き融資を使う
もう一つの資金調達方法として、各都道府県にある「信用保証協会」の保証を受けることを条件に融資を受ける制度があります。
「制度融資」と言ったりします。
この信用保証協会を使う手法も創業者に多く利用されています。
保証付き融資について解説していきましょう。
信用保証協会の保証が必須条件
「制度融資」を利用するには、各都道府県にある「信用保証協会」という機関から保証を受ける必要があります。
千葉県なら「千葉県信用保証協会」です。
信用保証協会から保証を受けることができれば、希望の金融機関から融資を受けることができます。
ここで注意したいのは、お金を出すのは銀行などの金融機関だということです。
なので、信用保証協会は保証するだけであり、直接お金は出しません。
融資は銀行などの金融機関に申し込みます。
銀行は支店内稟議に通過した案件を保証協会に持ち込みます。
保証協会でOKが出れば、銀行が融資を実行するという流れです。
また、融資制度も「県」の制度「市町村」の制度が用意されています。
とくに市町村の制度は、自治体ごとに条件が違うので調べる必要があります。
(市町村によっては融資制度がないところもあります)
千葉県の創業融資制度
この記事では市町村単位の融資制度ではなく、千葉県全域で利用できる2つの創業融資制度をご紹介します。
制度内容は新年度開始時に変更されることがあります。保証協会の公式HPもご確認ください。
創業等関連保証
利用できる方
(1)事業を営んでいない個人で、融資金額と同額以上の自己資金を有し、1ヶ月以内に事業を開始する具体的計画を有する方
(2)事業を営んでいない個人で、融資金額と同額以上の自己資金を有し、2ヶ月以内に新たに会社を設立し、事業を開始する具体的な計画を有する方
(3)事業を開始してから5年未満の個人事業者
(4)設立の日から5年未満の会社
限度額
1500万円以内
保証期間
10年以内(据置1年以内を含む)
返済方法
分割返済
利率
金融機関所定利率
信用保証料率
0.8%
解説
こちらの制度は自己資金と同額までしか借りることができません。
例えば、自己資金が300万円なら融資額も300万円までとなります。
創業関連保証
利用できる方
(1)事業を営んでいない個人で、1ヶ月以内に新たに事業を開始する具体的計画を有する方
(2)事業を営んでいない個人で、2ヶ月以内に新たに会社を設立し、事業を開始する具体的な計画を有する方
(3)事業を開始してから5年を経過していない個人事業主、法人
限度額
2000万円以内
保証期間
10年以内(据置1年以内を含む)
返済方法
分割返済
利率
金融機関所定利率
信用保証料率
0.8%
解説
こちらの制度は自己資金と同額までという条件がありません。
そのため、自己資金額を超える金額の融資も可能になります。
例えば、自己資金が300万円で500万円の融資も可能になる制度になっています。
以上、県の融資制度を使う場合はどちらかの制度を使うことになります。
制度の中身を書いてきましたが、どちらにするか神経質になる必要はありません。
多くの場合、どちらかに当てはまります。
それよりも日本政策金融公庫と同様に、保証協会の貸せるか貸せないかの審査に通過することが重要です。
また、県の制度ではなく市町村の制度を使う場合は、ここに記載した制度とは別の制度が用意されています。
お住いの市町村の制度を調べてみましょう。
市町村の融資制度の特徴
市町村の融資制度は各々違いますが、多くの自治体で共通する部分もあります。
よく目にするのが「利子補給」と「信用保証料の補助」です。
「利子補給」というのは、銀行に支払った利息の一部を、後で自治体が補助してくれるものです。
そして、「信用保証料の補助」というのは、融資を受けるときに信用保証協会に「信用保証料」を払うのですが、その信用保証料の一部を自治体が肩代わりしてくれます。
このように、市町村の融資制度には特典が用意されていることが多いです。
その反面、融資までの手続き工程が増えるので、入金まで長期間かかります。
最低でも3ヵ月はみておいた方がよいでしょう。
保証付き融資でおすすめの金融機関
信用保証協会の保証付き融資を利用する際に、おすすめの金融機関と、おすすめしない金融機関があります。
こちらについても解説していきます。
信用金庫や信用組合に申し込む
保証協会を使う時は民間の金融機関が申込み窓口となります。
窓口となる金融機関選びも大切な要因です。
融資が決まった際には、窓口となった金融機関に口座が作られ、その口座に融資金が入金されます。
私がおすすめしているのは「信用金庫」や「信用組合」といった小規模で地域に根差した金融機関です。
理由としては
・創業融資のような数百万円単位の小口融資も積極的に支援してくれること
・融資実行後のお付き合いがしやすいこと
・融資後の関わり方によっては、色々な提案をしてくれること
などがあります。
以下、それぞれの金融機関の簡単な特徴です。
信用金庫
地域密着型の金融機関です。
千葉県内に本店所在地がある信用金庫は以下です。
・千葉信用金庫
・銚子信用金庫
・東京ベイ信用金庫
・館山信用金庫
・佐原信用金庫
特徴
起業時は信用保証協会の保証付きで融資を行います。
ただし、信用金庫から融資を受けるには会員にならなければいけません。
また、信用金庫自体の預金残高がメガバンクや地銀に比べると少ないため、案件ごとの融資金額も小さくなります。
信用組合
信用金庫よりも規模が小さい金融機関です。
千葉県内に本店がある信用組合は以下です。
・房総信用組合
・銚子商工信用組合
・君津信用組合
特徴
融資を受けるには組合員になる必要があります。
こちらも起業時には信用保証協会の保証付きで融資を行います。
信用金庫と信用組合はプロパー融資の金利が他の民間金融機関より高めです。
その分、きめ細かいサービスをしてくれます。
おすすめしない金融機関
ここまで、おすすめの金融機関として、信用金庫と信用組合を挙げました。
逆に、個人的にはおすすめしない金融機関もあります。
「メガバンク」です。
意外に感じる方も多いと思いますが解説しています。
メガバンク
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3行をまとめてメガバンクと呼んでいます。
りそな銀行も含めて4大銀行と言うこともあります。
知名度も抜群で企業規模も巨大です。
三菱UFJ銀行は2019年3月末時点で、約87兆円の融資量があり、全国1位の融資量となっています。
メガバンクの傾向
メガバンクは金額の大きい案件を好む傾向があります。
開業資金のように数百万円単位の金額は、メガバンクにとって少額の部類に入るので敬遠されます。
理由のひとつとして、数千万円の融資も数百万円の融資も、銀行員の仕事量にほとんど差がありません。
であれば、百万単位より千万円単位の融資をたくさん通した方が、銀行マンの営業成績になりやすいです。
たとえば、400万の創業融資を5本通すより、3000万の融資を1本通す方が成績的には優秀で、効率的ということです。
また、開業後のお付き合いという理由もあります。
メガバンクは規模が大きいので、一人の担当者が数百件の会社を受けもっています。
そうなると、担当者との関係が希薄になりやすいです。
特に財務内容が悪い会社などは、訪問対象から外れるので、いざという時にドライな対応をされる可能性があります。
以上のような理由から特別な理由がない限り、
開業したてで付き合うメリットは無いと思ってよいでしょう。
企業規模が大きくなってから、サブバンクとして付き合い始めるのをおすすめしています。
まとめ
以上、開業資金を融資してくれる金融機関を解説してきました。
創業期の融資は長期間で返済することがほとんどです。
なので、金利が低い公的融資を使うのがセオリーです。
その公的融資として「日本政策金融公庫」と「信用保証協会の保証付き融資」をご紹介しました。
まとめとして、この記事では以下のことを解説しました。
・日本政策金融公庫の創業融資制度を使う。
・信用保証協会の保証が付いた融資を使う。
・市町村の制度を使う場合は利子補給などの特典が付く。
・信用保証協会を利用する場合は、信用金庫や信用組合を窓口にして申し込むのがおすすめ。
・逆に、メガバンクはおすすめしない。
以上のことをお伝えいたしました。
少しでもお役に立つ内容であれば幸いです。